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2009年04月04日

032 頭痛 28歳男性 柴胡加竜骨牡蛎湯など

037 頭痛 28歳男性

[症例] 28歳男性
[主訴] 頭痛
[初診] 12月24日
[現病歴] 以前から1ヶ月に1回,20秒程度の頭痛があったら最近増悪してきていた.4日前から左即頭部痛発症.夜になると増悪.今回は痛みが残り,痛みで倒れこむことある.内科受診しNSAID処方,脳外科受診し頭部CT異常なし。近日MRI取る予定.頚椎異常からの頭痛が心配で受診.
[他症状] 頭部を動かしたときに「ピキピキ」と痛む.じっとしていると平気.
冷え症、唾液多い、食後眠くなるときある、水はよく飲む,トイレに行く回数が多い,便,3〜4ヶ月前から便の出悪くなってきた.
 4年前に職場が変わってから目の隈ひどくなった
[生活歴] ホテルマン
[既往歴] 左額・幼少時外傷・髄液漏あったため手術歴あり(頭蓋骨に穴があいている))

[現症] 体重 88kg(20歳時107kg)
 体温 36.9℃,血圧 110/69 mmHg, 脈 68
 Jolt(-),歩行障害(-),動作障害(-)
四肢 指の爪をかんだあと目立つ,
 腹 皮膚線状目立つ,臍左横に手術痕
 線維筋痛症 triger point(++)
[検査] 
 一般血液検査異常なし,副鼻腔CT異常なし,
[漢方所見]
(望診)はきはきと話をされる.表情暗くはない,神経質そう
    目の下の隈が目立つ
(舌診)苔 黄、舌質 先端紅・胖大、舌下静脈(++),歯痕(++)
(問診)声質正常
(脈診)沈,右>左
(腹診)圧痛(-)

[判断と処方]
明らかな器質的異常なし.
感冒の一種か? 神経質そうな外見や脈からはストレス性とも感じる.
機能性頭痛(偏頭痛、群発頭痛、筋緊張性頭痛)としては非典型的。
筋肉痛も目立つので葛根湯で様子見.NSAIDも処方.

[経過]
・1週間後
「2日目,3日目の頭痛がひどかった.が,楽になってきた」「最近よく汗をかく」
「薬飲んでいる。少しおさまってきた気がする」

表情明るい
舌 苔黄、先端紅、
左胸脇苦満(+)
全身の繊維筋痛症のトリガーポイント陽性

小柴胡湯証に変化してきた気がしたが、葛根湯効果ありそうだったので葛根湯をもう1週継続

・2週間後
「楽になってきたが今も時々痛い」
「痛くない日もあるが…。痛みで倒れることはなくなった。
 スポーツするとすっきりする。肩こりはだいぶ楽。軽い。
 目の隈は、4年前に職場が変わってからひどくなった」

脈 沈 特に左が弱い
舌 歯痕(++)、唾液多い、裂紋少

頭痛改善しない
体格のわりに脈が弱すぎる。病歴から脾虚あり。

補脾に人参湯7.5g開始
葛根湯に,人参湯を加えて補うことにする鍼灸院も紹介。

・3週間後
「2日前に最初の頃と同じくらいのひどい頭痛があった.あとは元気」
「便の回数が1回/2日にへった.尿の回数とても減った」
鍼灸院には行っていなかった

腹 両肋骨窩圧痛(++),心窩部ややへこみ(+)圧痛(+)
頭頂部軽度脱毛

風邪ではない。柴胡加竜骨牡蛎湯証と判断。
葛根湯・人参湯中止。
柴胡加竜骨牡蛎湯(大黄(+))7.5g開始

・4週間後
「少しずつよくなった気がする.前日頭痛発作あった」「飲むと便がよく出る.快便」
両肋骨窩圧痛(+),臍の斜め左右上下に圧痛軽度

効果ありそう,柴胡加竜骨牡蛎湯続行.

・2ヵ月後
「転職した」「頭痛まだあるが,マッサージされるとき程度に改善」
「自分でもよくなってきているんだろうな,と思う」
「ストレスたまらなくなった気がする」

脈 沈,ただし今までより浮いてきた印象
舌 淡 舌下静脈(+)
腹 圧痛点消失 「押されると気持ちいい感じがします」

薬続行.

・3ヵ月後
「頭痛消えた,通じもいい」「あれ効きますね,気の持ちようがよくなった.体もよく動くようになった」
腹 臍左横手術痕部に押して気持ちいい場所あり.5分ほどおさえるとしこり消えた

よくなるまで薬続行とする.

・6ヵ月後
「薬が効かなくなってきた.便通1回/3日に減った.便は普通の硬さ,出ないと硬くなる」「今の薬は気持ちを楽にしてくれる.あれがなかったらどうなったことか...」

左大衡,左下腿外側近位端,臍左脇に鍼施行.「とても気持ちいい」

柴胡加竜骨牡蛎湯に調胃承気湯を追加してみる.

(感想)
・初めの頃,腹部所見明らかなもの無かったのに,だんだんと明瞭化してきた.葛根湯で動かしたせいか? その後も腹診所見がコロコロと変わった.若い患者は変わりやすいのか?
・補うことが今後必要か?
・柴胡加竜骨牡蛎湯は、若いストレスの多い男性には効く印象

2008年11月18日

021 3〜4年続く強い背部痛 53歳女性

症例: 53歳女性
主訴: 背部痛
初診: 9月

現病歴: 3〜4年前から背中に痛みと凝りがある。夜仰向けに寝ることができない。医療機関で精査するも特に異常なく、温泉・鍼・体操も一時的にしか効果ない。
 痛みは背中中央。背中を鷲づかみにするような筋肉が収縮するような痛み。夜中に目が覚める。背中を丸めないと寝れず、朝起きると体中がこわばっている。

他症状: 右手中指・薬指に痺れがある

既往歴: なし
生活歴: 喫煙 15本/日、飲酒(-)
家族歴: 母RA、父再生不良性貧血

所見:
全身元気。
右肩甲骨内側に圧痛あり。右手3-5指間にこわばりあり
腹部 心窩部に圧痛(+)、臍右下に圧痛(+)
頭痛なし

舌 白色の苔多、やや黄色
脈 やや浮く、細


判断と処方:
右心包系の痛みと考えられる。消化器・循環器の機能低下も考えられる
全ての症状の治療を開始しても難しそう。全身倦怠感強そうなのでまずは消化器機能を整えることとした。
→六君子湯処方

経過:
(1ヵ月後)
・胃の方はほんの少しよくなった気がするけれど、背中はよくならない
・胃、ちょっと動き出したかな、と思う
・背中にすごく汗をかく、そのあたりからいつも冷える
・肩首筋が凝る

→風門の冷汗と筋肉痛から葛根湯証と考え、追加で処方

(2ヵ月後)
・背中の痛みから、肩こり・腰痛といった風邪をひいたときのような痛みになった
・よくなってきた気がする
表情よい

→効果あったと判断。冬は違う地域で生活されているとのことなので、3か月分処方。痛みつづいていたら春から再診とした

(感想)
4年続く痛みを漢方をつかうとなおせるのは、こっちもうれしい