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2010年12月22日

055 むずむず脚症候群 84歳男性

[症例] 84歳男性
[主訴] むずむず脚症候群
[東洋医学治療開始日] 10月
[現病歴] 不眠症、胃潰瘍を加療されていた方。精神科では神経症圏の可能性も検討されていた。不眠症加療目的の精神科受診時に、TVでみたドーパミン作動薬が自分にぴったりだと処方希望あり。
[他症状] 寝るとき、足が熱をもつのが気になる。それが不眠の原因になっているわけではないとおもう。
[既往歴] 慢性腎不全
[内服] プロトンポンプ阻害薬、ミヤリ散、抗精神病薬(ペルフェナジン)、脂質代謝改)薬(ポリエンホスファチジルコリン)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬(4種類)、

[現症] 身長高い、体格がっちりとしている
[検査] 腎不全(BUN 54、Cre 2.36、Hb 9.3)

[漢方所見]
(望診) しっかりとしたスーツ姿

[判断と処方]
慢性腎不全あり、ドーパミン作動薬はリスクが高かった。
東洋医学的に治療することとし、むずむず脚症候群に対し八味地黄丸内服開始した。

[経過]
2週間後、「足がほてるのはよくなりました。あれは効きますね」
「今困ることは特にありません。若干寝つきがわるいかなと思うが生活習慣で調整する」

(感想)
慢性腎不全とむずむず脚症候群を同時にもっていたため八味地黄丸を使用したところ著効した症例。精神科ではさまざまな症状をいつも訴えて神経症圏も疑われていたがすべてすっきりと落ち着いたのが印象的だった。

2010年05月15日

047 下半身脱力 79歳女性

[症例] 79歳女性
[主訴] 歩けなくなった
[初診] 7月
[現病歴] 定年になってから体がおかしくなった。食べるものがまずくなった。
今年に入ってから足が前に出なくなった。
[他症状] 頻尿(夜4〜5回おきる)、歯は下5本残っている、足冷える
[既往歴] 高血圧、心房細動、気管支喘息、左顔面神経麻痺、白内障、緑内障、
毎年の人間ドッグでは異常指摘されず
[内服薬] ワーファリン 4mg、アムロジン 5mg、フルタイド100 1日2回、モーラ
ステープ

[現症] 左顔面痙攣軽度(+)、胸部 不整脈あり、雑音なし、四肢・左ひざク
リック(+)、むくみなし
[検査] 血液異常なし
[漢方所見]
(望診)抑うつ的
(舌診)苔 黄・粗、舌下静脈(+)
(脈診)右 浮・緊、左 沈・弱
(腹診) 腹力とても弱い、満、臍左下部に違和感あり

[判断と処方]
第一印象が抑うつ傾向。全身倦怠感、食欲不振、気管支喘息あるため、消化器・
肺を治療し気を補う補中益気湯5.0g開始。

[経過]
●10日目
「体がしっかりしてきた。漢方薬利く気がする。前は2軒となりまで歩くのがやっ
とだったけれど少し歩けるようになった」
「溶かして飲むとまずい。粉で飲んでいる」

補中益気湯継続
 
●1ヵ月
「しんので歩けない。体の奥がしんのいかんじ」

八味地黄丸4.0g分2をメインに変更。胃腸が弱く副作用でやすいと思われたので、
また喘息もあるので補中益気湯 2.5g分1で継続。

●1ヵ月半
「えらいいいよ。すっとたったり歩いたりできるようになった」「近すぎたトイ
レが良くなってきた。眠れる時間も増えた」

●5ヶ月目
「1km離れたところもがんがん歩ける」「時々むくむ」
八味地黄丸 を 牛車腎気丸 に強める

●7ヶ月目
「足のむくみ、えらいいいような気がする。まだしんの」「ハリ、週1回いって
いるよ。いくととてもよくなる」

●9ヶ月目
「しんのさ、まだある。何かやるとどきどきする。薬やめるってできるかな?」
治療できる範囲は治療できたか。薬やめても症状でないか、1ヶ月後に様子見

(感想)
高齢者の下半身脱力。腎虚とは思ったが、抑うつ傾向と消化器の弱さが目立ち、
消化器と肺の治療を先行させた。結局補腎で下半身の脱力軽減した。しかし倦怠
感は継続。高齢であり仕方のないことだったのか、他の薬剤を使えばなおったの
か。補中益気湯 が当初より口に合わなかったのは気になっていた。検討してお
く。

2008年09月20日

014 易疲労感・めまい・耳鳴り 80歳女性

症例: 80歳女性
主訴: 易疲労感・めまい・耳鳴り 等
初診: 6月

現病歴: 25年前の外傷後、めまいと耳鳴り出現。50日入院して加療するも耳鳴りは一生続くと言われた。特に今年になってから右耳が耳鳴りでぜんぜん聞こえなくなった。最近少し動くと疲れる。右の肩甲骨の下が痛くなる。右膝が痛くなることあるので時々ヒアルロン酸の注射を整形外科でしてもらっている。

他症状:
・尿は近い、尿失禁しばしばあり、夜1〜2回トイレに起きる

既往歴:
・不整脈(SSS ペースメーカーあり)
生活歴:
・タバコ(-)、酒(-)

所見:
・生気の無い顔、全身元気ない、声小さい
・難聴
・口唇 紫
・心窩部硬く圧痛あり、右下腹部軽度圧痛、臍下脱力

処方と経過:
・所見から鬱血や消化機能の低下が目立ったが、倦怠感や難聴や膝疼痛から根本は腎陽虚と考え、八味地黄丸選択した。

→1ヵ月後
「肩甲骨の下の痛みがなくなりました」
「1週間薬のんだら胃がおかしくなった気がして1週間のむのをやめた。でも娘に言われて少し量を減らして呑み続けている」
「右の膝、左の腿の上にのせられなかったのがのせられるようになった」
「なんとなく元気が出るようになって来た気がする」

地黄による消化器症状一時期出現するも、体が慣れて回復した。効果はあるようなので続行とした

(その1週後 めまいあり救急で他医を受診)

→2ヵ月後
「今も右を下にしてねるとめまいがおきる。右が耳鳴り強い」
「膝の痛み楽になって正座が少しできるようになった」
「肩も痛い。それでめまいがおきているのか? 畑をやると右肩が痛くなる」
「薬をのむと効いたような気がする」

脈: 虚
口唇: 紫

八味地黄丸の効果はでているのだろうが、めまいが続いているので頭部の水毒をさばく苓桂朮甘湯で1週間様子診ることにする。漢方だけでなく、即効性のある鍼灸にも通ってもらうことにする。

→2ヶ月と1週後
(その1週の間に膀胱炎あり泌尿器で治療を受けていた)
「めまいは減ったけれどまだある」
「鍼灸やったらめまいは2〜3日でよくなった。肩こりがなくなって楽」
「いいサプリメントないかな」

息子の話では、鍼灸に行くのは嫌がっていたが息子の説得で行ってみたとのこと。それがよく効いて、行ってみて喜んでいるとのこと。

サプリメントのようなものとして八味地黄丸をだしていると説明し、続行。

→3ヵ月後
「鍼灸やったらめまいがなくなった!!」(とても喜んでいる)
「肩も、少しいいと草むしりとかしちゃって肩が痛くなることもあるけれど、湿布しなくてもよくなりました」
「疲れやすくなくなった」
「耳鳴りは20数年も続いているし、消えない」

足が軽そう。表情も柔らかい

脈: 中庸
舌: 紫、舌下静脈怒張

効果も安定してきたので2ヵ月後のフォローとした


(感想)
漢方薬と鍼灸の効果をなかなか納得してもらえなかったが、基礎体質(体力、膝痛)が改善できたと考えられた。

2008年07月31日

004 術後に物忘れが強くなった 70代男性

症例: 70代男性
主症状: 物忘れ

病歴: 2ヶ月前に胃癌EMRを施行(7日間入院)。退院後物忘れが出現したことに家族気づくが、本人に物忘れの自覚はない。認知症の進行を薬でとめたい娘につれられ精査のために総合外来を受診した。本人は診療に対して拒否的だった。

既往歴: 26年前より高血圧内服加療中、3年前に右腎癌で腎臓摘出(その後右鼠径部がしばしば痛む)、幼少時虫垂炎

症状:
・尿は、3年前から夜間2時間おきに起きてするようになった
・足がしびれる。特に手術した頃は左足がしびれていた。膝に力は以前から入りにくい
・以前から腰痛あり
・足が冷える
・耳は3年前から遠くなった
・趣味は野菜作りなど楽しめている

所見:
長谷川式 21/30点
舌 やや紫、舌苔少量、舌下瘀血(+)、口唇紫

判断:
術後・入院後の腎陽虚の悪化。
八味地黄丸を少なめに5g2X開始。

その後の経過:
1ヵ月後、娘は「少しは元気になりました」「物忘れはあまりよくなってはいませんが」
本人表情柔らか。難聴改善傾向。
2ヵ月後、再度娘とともに来院。表情明るい。認知症軽減。
3ヵ月後、妻のみとともに来院。笑顔あり。認知症明らかに消失。難聴強度。「足がいてえよ」「食欲ある」
腎陽虚改善傾向も不十分と判断。牛車腎気丸7.5g3Xに強めた。
4ヵ月後にフォロー予定。ついでにニューモバックスも投与を予定。

(感想)
入院後、術後の患者さんをみているといつも、腎陽虚の悪化を感じていた。補えばきっとよくなる、といつも感じていた。やっぱりその予想はよかったのだと手ごたえを感じた。

そのうち、せん妄患者さんに六味丸を使ってみたい…。よくなると思うのだけれど…。