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2010年12月22日

051 78歳男性 喉のいがいが・咳・痰

[症例] 78歳男性
[主訴] 喉のいがいが・咳・痰
[初診] 9月
[現病歴] 約10年前からのどの違和感、咳、痰あり。医者にかからず様子をみていたが最近症状が悪化傾向あった。一度医者にみてもらおうと受診した。
[生活歴] 酒 焼酎0.5合、タバコ(-)
[既往歴] 脊柱管狭窄症(1年前手術)
 健康診断は毎年受けているが異常は指摘されていない
[内服] 薬草を煎じてのんでいる(ゲンノショウコ、ドクダミ、ハトムギ)
[家族歴] 6人兄弟、全員健康
[性格] のんき
[他症状] ニクを食べると左足が2〜3日痛くなる、ホルモンは特にだめ
[ROS] ストレスは感じない、唾液は多量に出るが困らない

[現症] 明らかな異常所見なし
[漢方所見]
(望診) 身長高い、脂肪少なく筋肉質、表情明るい
(舌診)黄色苔少量、厚さは薄い
(脈診)やや弱

[判断と処方] 判断少ないが、10年前からの器質的な異常があるとは考えにくい。半夏厚朴湯6g分3で様子見とした。
[経過]
2週間後、「だいぶよくなった! 咳もだいぶよくなったよ。夜中も咳が出ない。家内もえらい良くなったといっている。薬は飲みいですよ」
2ヵ月後、3ヶ月とさらに症状改善も、軽度も残存しているため内服継続としている。

(感想)
咽喉頭異常感症はストレスで出現すると感じていたが、明らかなストレスなく、またストレスを感じやすい気質でもなかった症例。ストレスにこだわる必要はないと学んだ。

2010年02月02日

043 のどがいがらっぽい・左頚部腫脹 43歳男性

[症例] 44歳男性
[主訴] のどがいがらっぽい、左頚部腫脹
[初診] 5月
[現病歴] 3年前からのどがいがらっぽい。ものを飲み込むときにひっかかる。1年位前から左頚部が腫れている。首を前傾すると、喉の前が後ろにあたっている気がする。耳鼻科、消化器科受診し内視鏡行うも異常なし。GERDではないか、とPPI・六君子湯処方されるも改善なく中断。「甲状腺の問題じゃないかと心配」で総合外来受診。
[他症状] 腰椎椎間板ヘルニアを8年前手術したが、昨年から左足のしびれあり(「立っていると刺されるような感じ」)。MRI施行も悪化はないと言われている。姿勢によっては足の甲も痛くなる。5分歩くとつらい。

[現症] 中肉中背、左頚部軽度腫脹も明らかな腫瘤触れず、
[検査] 頚部エコー も異常認めず

[漢方所見]
(望診) 問診表にびっしりと几帳面に書かれている。
(舌診) 特に異常なし
(脈診) 細、滑
(腹診) 上腹部が硬く軽度圧痛あり、左上腹部にしこりあり

[判断と処方]
咽喉頭神経症 疑い。半夏厚朴湯効きそう。問診表にびっしりと書いている点も半夏厚朴湯を示唆する。
⇒半夏厚朴湯を処方。

[経過]
●3週目
「症状改善しました」
継続することにする

●2ヶ月目
「寝汗をかく」
寝汗からは帰脾湯効果ありそうな気がするが様子見とした。

●4ヶ月目
仕事に加えて子供の関係で、夜21時にねて、朝1時に起きる生活を続けていると話してくれる
処方継続

●7ヶ月目
「それ以上変わらずにいる」
手足が冷たくなることはないと。
手の爪が、匙状でありかつ縦筋が目立つことに気づく。
また、食後眠くなるとのこと。

脾血虚がある印象。
寝汗も含めると、帰脾湯効果ありそう。ストレス強いのでその整理も目的に、加味帰脾湯を加えることにする。
半夏厚朴湯を3包→2包へ。加味帰脾湯1包追加

●9ヶ月目
「薬変えてからだいぶ楽になりました。今の症状は初めのころの3割くらいです。まだいがらっぽさはあるけれど、詰まった感じはなくなった」
今の処方をしばらくつづけることにする。いずれ加味帰脾湯の増量も検討。


(感想)
咽喉頭神経症、と考えて半夏厚朴湯をつかったがそれのみではよくならなかった症例。振り返ってみれば、半夏厚朴湯のみで治る患者さんのようなストレスの強さや張り詰めた感じは弱く、ストレスで弱っている印象を受けていた。そのような患者はやはり加味帰脾湯を加えるべき。

2010年01月29日

042 息切れがする 43歳女性

[症例] 43歳女性
[主訴] 息切れがする。思い切り息ができないかんじ
[初診] 11月
[現病歴] 約1ヶ月前から階段を3階分のぼったら息が切れたのが始まり。この1ヶ月、思い切り息が出来ない気がする。事務作業をしていても、喉の辺りの異物感あり深呼吸できない気がする。
[他症状] 時々咳が出る
頭痛:月経前後、鼻炎(-)、ひえ(-)、のぼせ(-)、むくみ(夕方少し)、痛み(-)、睡眠・食事・尿・便 正常、子供と妹の死亡でのストレスあり
[生活歴] タバコ10本/日、アルコール ビール700cc/日
[既往歴] なし
[家族歴] 妹 子宮頸がん、妹 詳細不明の腎不全で腎移植

[現症] 体重・身長 中肉中背(やややせてる)
[検査] 甲状腺触れず
[漢方所見]
(望診) 全体的に元気ない、声が弱弱しい、表情には鋭さある
(舌診) 正常
(腹診) 正常

[判断と処方]
@COPD、A喘息、B食道咽喉頭神経症 を考えたが、Bが最も可能性高そう
ハンゲコウボクトウ処方

[経過]
●3週後
「息苦しさはだいぶ楽になった。階段も苦労ない」
表情はまだ暗い
処方継続

●2ヵ月後
「喉の詰まったかんじはほとんどない。ときどきドキドキする」
「タバコとお酒はやめられた! ただちょっとふとった」
良好。症状再発したら飲むための10日分のみ処方し、フォロー中止。

(感想)
典型的なハンゲコウボクトウ証。ストレスがのぞければ根本的にはいいのだが…

2008年08月11日

006 慢性咳漱・月経痛 40代女性

症例: 40代フィリピン女性
主訴: 慢性咳漱、月経痛
初診: 5月

病歴: 1年前から咳が止まらない。近医(病院も呼吸器科なし)、耳鼻科(診療所)、精神科(診療所)と受診し、鎮咳剤、去痰薬、平滑筋弛緩薬、抗ヒスタミン薬、SSRI、抗生剤処方されるも効果なし。月経による貧血のため鉄剤も内服している。胸部X線等問題ないと言われているが、詳しく検査してほしいと夫に付き添われに当院受診。

既往歴:
・半年前に甲状腺腫大を指摘され、3ヶ月前に摘出術施行(毎年健診受けているも指摘されたのははじめて)
・花粉症
内服薬: アストマリ、ブルフェン、レスプレン、アドエア、パキシル、フェロミア、ゼスラン

他症状:
・痰が絡まってつらい
・咳き込みすぎて吐くこともある
・寒さ苦手、とても冷える
・雨の日が苦手、痰が増えて頭痛もでてくる
・排便は毎日ある、食欲は安定
・卵、鳥を食べると症状悪化する

生活:
・職業 製造工場職員(粉塵あり)

所見:
・血液 肝逸脱酵素軽度上昇、IgE 300(花粉症の時期)、甲状腺機能異常なし
・呼吸機能 特に異常なし
・体重 十年前から7kg増えて、BMI 30

・舌 細長、青、歯痕(++)、舌下静脈怒張(+)
・胸 異常音なし
・腹 左胸脇苦満(+)、臍上・左右下圧痛(+)

処方と経過:
・はじめは咳が強いことから神秘湯7.5g3Xを処方してみた。
・が、2週間後「喉が痒くてたまらなくなり痰もなかなか出なくて吐いた」「薬が合わないのかなとやめてみたらよくなった」とのこと。胆気うっ滞??と考え、半夏厚朴湯7.5g3Xに変更。

・1ヶ月後、「咳は出なくなりました」とのこと。「卵や鳥を食べるとまだ吐いちゃう」「気持ちの薬をやめたら咳がでてきた」
「子宮筋腫がつらくて。生理が半月は続く。出血がひどくて貧血になるから鉄剤を飲んでいる」「何かしてもらえたら…」と新たに訴えあり。腹部所見で胸脇苦満消失、臍左下の圧痛のみ残存。舌下静脈(++)。オ血と判断。子宮筋腫縮小効果のevidenceある桂枝茯苓丸7.5g処方、半夏厚朴湯5gに減量。

・2ヶ月半後、「このあいだは生理が3週間続いていたけれど、飲み始めた次の日から生理楽になった」「不安の薬はのまないようにした。でも咳は出ない」

・3ヶ月半後、「新しい薬になって、朝おきにくい…」「生理があるとき、おなかの左下が2日間くらい痛い」 体力が落ちていて、血払う桂枝茯苓丸では強すぎる、補う効果もある当帰芍薬散7.5gに変更。

・4ヶ月後、「卵、鶏肉食べてもアレルギーあまりでなくなった」「生理の痛み我慢できるようになった」「前頭部が思くておすと気持ちいい、左後頭部が痛い」「もう他の病院の薬は鉄剤しかのんでいない」「朝目覚まし時計使わなくても起きれるくらい元気になった」
左上半身にゆがみがたまっていたので、TE3(左手5指近くの甲)、BL6(左頭頂、ここのみ置鍼)、TE16・GB21(首・肩)、PC3(肘内側)、LI4(1・2指の間)に取穴  (注: WHOの表記方法に従って記載。日本人にはあまり知られていないが、アメリカなどでは針はよく研究されている)
「気持ちいい」とのこと。頭痛軽減した様子。薬が多い可能性があるが、次回までは今の半夏厚朴湯・当帰芍薬散を継続することとした。

・4ヶ月半
「調子いい」
「咳、たまにでるけど前みたいに喉痒くない。出るときは鼻も痒くて鼻水でちゃう」
「生理。いつもなるまえ、両脇がぱんぱんになる。今そんなかんじ」
「2週前からぐっすり眠れない感じ」
「いつも左手ぱんぱんだったけれど、鍼をやってからそれなくなった」

脈 やや沈、虚、細
舌 歯痕(++)、オ血(-)、淡白色
腹 臍左上部〜臍左横 圧痛あり、腹力(+++)

薬続行

・6ヶ月目
「2週くらい前からまた喉がかゆくなってきちゃった」
「生理、前は2週間はつづいたけれど、今は1週間で終わる。前は塊があったのが、今はサラサラでたくさん出る。はじめは赤、最後は黒。生理のあとは自分でも貧血って気がする。目も手も白い」「前は生理前左下が痛かったのが、右下が痛くなるようになった」
「子宮筋腫、病院で検査したら、前は丸かったのが、今は長く大きくなったっていわれた」

脈 やや虚
腹 臍下部に圧痛(+)
舌 やや淡色、歯痕(++)、オ血(-)

半夏厚朴湯を2包→3包に再度増量

・7ヶ月目
「薬もどしたら、喉良くなった。痰でないし痒くない」
「生理、いつも胸がパンパンになるからなる前に分かるんだけれど、それが分からなくなってきた」
「1週間くらい頭がすごく痛い」「1ヶ月前から辛くなってきた。冷たくなっている感じ。ボーっとする」「頭を前に傾けると鼻に水が入る感じ」
「右肩が辛い」

頭の皮膚が全体にむくみ著明。頭頂やや後方のみへこみあり。圧痛あり。

左心包系〜頭頂まで鍼施行
状態改善

薬続行
副作用はしばらく鍼で調整していく


(感想)
・まだまだ漢方になれていなかったころに右往左往してしまった症例。いまだったらもっとまっすぐゴールにつけるけれど…。
・「喉の違和感」「甲状腺機能異常」に半夏厚朴湯、を実感。喉の異常にいいのなら、橋本病とかにはどうなのか? 年齢や性別を考えると、効きそうな人が多そう
・漢方薬でおさまってきたせきも、SSRIをやめると咳が出る、というのは、こころとからだが繋がっているということで、興味深かった
・神秘湯は症状悪化させることもあるとの報告あるが、本症例もそうだった。気をつける必要あり

2008年07月31日

002 咳、橋本病 50代女性

症例: 50代女性
症状: 都会の空気を吸うと咳き込み苦しくなる

病歴:
橋本病あり、近医でフォローされていた。
東京在住だが都心に出ると咳き込み苦しくなり、喉のあたりがカーッと熱くなり、悩んでいた。鎮咳剤処方されるも効果少なかった。毎年肺炎も発症していた。

判断:
半夏厚朴湯証

その後の経過:
内服すると咳が消失した。都会に出ても発作が起きなくなった。

(感想)
西洋薬で対症療法を行っても効果が少ないときに、きちんと診断して漢方薬を処方すると非常に効果があると学ばせていただいた。