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2008年09月20日

014 易疲労感・めまい・耳鳴り 80歳女性

症例: 80歳女性
主訴: 易疲労感・めまい・耳鳴り 等
初診: 6月

現病歴: 25年前の外傷後、めまいと耳鳴り出現。50日入院して加療するも耳鳴りは一生続くと言われた。特に今年になってから右耳が耳鳴りでぜんぜん聞こえなくなった。最近少し動くと疲れる。右の肩甲骨の下が痛くなる。右膝が痛くなることあるので時々ヒアルロン酸の注射を整形外科でしてもらっている。

他症状:
・尿は近い、尿失禁しばしばあり、夜1〜2回トイレに起きる

既往歴:
・不整脈(SSS ペースメーカーあり)
生活歴:
・タバコ(-)、酒(-)

所見:
・生気の無い顔、全身元気ない、声小さい
・難聴
・口唇 紫
・心窩部硬く圧痛あり、右下腹部軽度圧痛、臍下脱力

処方と経過:
・所見から鬱血や消化機能の低下が目立ったが、倦怠感や難聴や膝疼痛から根本は腎陽虚と考え、八味地黄丸選択した。

→1ヵ月後
「肩甲骨の下の痛みがなくなりました」
「1週間薬のんだら胃がおかしくなった気がして1週間のむのをやめた。でも娘に言われて少し量を減らして呑み続けている」
「右の膝、左の腿の上にのせられなかったのがのせられるようになった」
「なんとなく元気が出るようになって来た気がする」

地黄による消化器症状一時期出現するも、体が慣れて回復した。効果はあるようなので続行とした

(その1週後 めまいあり救急で他医を受診)

→2ヵ月後
「今も右を下にしてねるとめまいがおきる。右が耳鳴り強い」
「膝の痛み楽になって正座が少しできるようになった」
「肩も痛い。それでめまいがおきているのか? 畑をやると右肩が痛くなる」
「薬をのむと効いたような気がする」

脈: 虚
口唇: 紫

八味地黄丸の効果はでているのだろうが、めまいが続いているので頭部の水毒をさばく苓桂朮甘湯で1週間様子診ることにする。漢方だけでなく、即効性のある鍼灸にも通ってもらうことにする。

→2ヶ月と1週後
(その1週の間に膀胱炎あり泌尿器で治療を受けていた)
「めまいは減ったけれどまだある」
「鍼灸やったらめまいは2〜3日でよくなった。肩こりがなくなって楽」
「いいサプリメントないかな」

息子の話では、鍼灸に行くのは嫌がっていたが息子の説得で行ってみたとのこと。それがよく効いて、行ってみて喜んでいるとのこと。

サプリメントのようなものとして八味地黄丸をだしていると説明し、続行。

→3ヵ月後
「鍼灸やったらめまいがなくなった!!」(とても喜んでいる)
「肩も、少しいいと草むしりとかしちゃって肩が痛くなることもあるけれど、湿布しなくてもよくなりました」
「疲れやすくなくなった」
「耳鳴りは20数年も続いているし、消えない」

足が軽そう。表情も柔らかい

脈: 中庸
舌: 紫、舌下静脈怒張

効果も安定してきたので2ヵ月後のフォローとした


(感想)
漢方薬と鍼灸の効果をなかなか納得してもらえなかったが、基礎体質(体力、膝痛)が改善できたと考えられた。

2008年08月11日

007 めまい 60代男性

症例: 60代男性
主訴: めまい

現病歴:
青年期よりてんかん、約10年前より、時々体動時の回転性めまいあり。脳外科にてフォロー。しばしばめまいにて救急受診。今回も、頭位変換性めまいあり救急外来受診。

他症状:
・つばが多い
・嘔気(-)嘔吐(-)
・心身ともに疲労がたまっている

既往歴:
・幼少期の両側中耳炎→難聴
・てんかん(20代より)
生活歴: 
・母親の介護を一人でしている、単身
・アルコール 焼酎3杯/日、タバコ(+)

所見:
・体格はしっかりしている
・頭位変換時に眼振(+)
・舌 淡、黄薄苔、舌下静脈(++)、舌下毛細血管(++)
・脈 やや浮、両側中枢側が虚、右>左
・心窩部に圧痛硬結(+)、腹力充実
・夏なのにステテコをはいている
・難聴
・夜は2〜3回トイレに起きる

処方と経過:
仰向けになるときにもめまいあり、循環器・中枢の異常は考えにくい。BPPVとしては毎回経過が短すぎ不自然か。
腎虚・脾虚をbaseとした体調不良か。肝も弱い…。全身のバランスが乱れていて証を掴みにくい…。
脾虚あるめまいなので半夏白朮天麻湯処方。翌日にはめまい改善(普段もすぐにめまい改善するとのことだが…)。
後頚部の疼痛もあるとのことなので針灸紹介。今後針灸とも協力し、証を判断し治療していく予定。

(感想)
うちの病院はめまいの特効薬な苓桂朮甘湯がないのでめまいので、この半夏白朮天麻湯を出すしかなのでつかっているのだけれど、めまいをおこす元の体質を整理するのにいい感触がある。胃腸が弱そうな青白さ、目の下の隈、胃腸の弱さの自覚、などがあればよく効く印象あり。

…めまいを訴える患者さんはとても多くて、そして、効くわけない、と分かっているメリスロン処方とかメイロン点滴とかよくされる。実際効かない。
だいたい、蕁麻疹とか肝炎でグリチルリチンの静脈注射とかするけれど、あれは漢方薬の甘草だと理解している医者がどれだけいることか。気軽に使っている下剤はもともと漢方薬からきているとわかっているのか。そもそも普段自分たちが使っている西洋薬のevidenceがどれはどれだけあってどれはどれだけないのかを理解していない。検査データ、数字で患者をフォローしても、病歴とか身体所見で患者をフォローすることができない。薬理、生理、病理を意識しないで病名→治療と短絡思考している医者に限って、漢方薬をバカにする。東洋医学的生理学まで毎症例きっちり落とし込まないと漢方薬は使えないから、そういったレベルの医者たちは漢方をバカにしないと頭がぐしゃぐしゃになるのだろう。医学部低学年の生理学から学びなおしてきてほしいものだ。