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2010年11月17日

050 頭痛 43歳男性

[症例] 43歳男性
[主訴] 頭痛
[初診] 10月
[現病歴] 「後頭部がじわーんするような頭痛」が春からある。夏からは頭痛に
加え動揺性めまいも出現するようになった。脳外科受診も脳に異常はなく、緊張
性頭痛の診断で緊張をほぐす薬を処方された。頭痛は突然来る。受診2日前、動
悸ありすわっているのがやっとの状況だった。1日前の夕方も、突然の耳鳴りに
続いてめまいが出現した。歩くことができないため家まで送ってもらった。
[自己評価] ストレス強い。自分なりに対処しているが整理できていない
[生活歴] 睡眠 23時〜5時半、食欲 普通、飲み物 会社では缶コーヒー・家
では焼酎2杯、大便 毎日ある・有形、小便 夜間起きない
[既往歴] なし
[家族歴] なし

[現症] 中肉中背、多弁
[漢方所見]
(舌診)歯痕(+)、腫大(-)
(脈診)浮・細、左関微弱、左寸弦

背中、肝ユ(肩甲骨下)が張っている

[判断と処方]
自律神経の乱れからの諸症状。
東洋医学的には肝の乱れが目立つ。

抑肝散 7,5g分3処方

[経過]
「薬を2週間のんで症状はほぼおちつきました」

1か月分追加処方し、自己調整いただき、症状継続すれば再診いただくこととした。

(感想)
抑肝散はもともと子供の癇の虫の薬だが、不穏・興奮状態の高齢者に現在はひろく使われている。特に、軽度な段階で抑肝散を使うととてもおちつき、介護が楽になっていく。そのように高齢者に使う薬として認識され一般内科で使用されているが、このストレス社会な現代はストレスからの自律神経失調症で効くことがよくある。

また、この症例のように、背中のツボをさすって探すことが大きなヒントになることがある。問診しながら背中をさすりそのひとの状態を大雑把に把握することは、鍼灸師はよく行っている手法。しばしば便利。

2010年01月21日

037 左手の痺れ・嘔吐 57歳男性

[症例] 57歳男性
[主訴] 左手の痺れ
[初診] 1月
[現病歴] 1ヶ月前から左手がしびれ、動きが少し鈍い気がする(「ドーン」という感じ)。「親が外科で治療していたら内科の病気だったことがあり、一度きちんとみてほしくてきた」
[他症状] 『2年くらい毎朝、仕事前に吐いている。吐くとすっきりする。休日は吐かない』、前から手に汗をかきやすい(兄もそう)、1ヶ月前から左まぶたが浮腫む(自分では気にしていない)、右足底がびりびりすることがしばしばあり。
[生活歴] タバコ(-)、アルコール ビール350CC
[既往歴] 腰痛症(20歳ごろ、4ヶ月入院治療、手術はしていない)、健康診断受けていない
[家族歴] 親 ALS・脳梗塞、姉 心臓病で37歳で死亡
[アレルギー] 花粉症、ホコリに弱い
[その他] 食欲良好、尿 夜1回起きる(3時ごろ)、便 毎日(やわらかめ)、睡眠 心配事あると朝まで眠れないことがある、野菜は好きではない、甘いもの好き、

[現症] 体重・身長 中肉中背、一般状態良好
[検査] 胸部X線・頭部CT・採血・ABI 異常なし
[漢方所見]
(望診) 異常なし、抑うつなし
(舌診)舌質 青色、腫大、舌下静脈 うっ血(+)
(脈診) 実
(腹診) 充実

[判断と処方]
肉体的な異常見えず。精神的に過敏な印象。
抑肝散で経過をみることにする。

[経過]
●2週間
「毎日はいていたのが、この2週間で2回しか吐いていない!」
「左手と右足の冷感はそのまま」

手・顔に汗多い
やはり実証・多汗症

抑肝散継続

●1ヶ月半
「手足変わらず。あげるのは楽になった」
「便出さないと頭痛くなるが、出れば調子いい。夜はぐっすり眠れないときもある」

脈 腎虚
舌 静脈うっ血、やや腫大
腹 下腹部が虚脱

便秘と精神症状を目標に柴胡加竜骨牡蛎湯に変更

●2ヶ月半
「こないだの薬飲んだら食欲がなくなって便も下る感じした」半分にしてもだめで中止しちゃった。嘔吐もまたでてきた。前の薬がよかった気がする

抑肝散 再導入

●3ヶ月半
嘔吐はとまった。夜右足がつる。手足の汗は変わらない。
腸弱い。小さい時はよく下痢をしていた。

本治目的に小建中湯を加える

●5ヵ月
症状続いている

小建中湯 中止

整理のための 抑肝散 に加えて、消化器から元気を補う 補中益気湯 投与開始。芍薬甘草湯 こむら返り時内服

●6ヶ月
嘔吐ほとんどなくなった
手の汗減ってきた
こむら返りは 薬を飲むとぱっとひく

●8ヶ月
「だいぶよくなりました。2ヶ月間一度も嘔吐なし」 補中益気湯は全部飲むと便柔らかくなるので半分にしている

状態良好。
2週間追加処方し、徐々に減らしていただくことにした。

(感想)
『毎日仕事前に吐く』という特徴的な症状あるのにそれを主訴とせず受診されたところ,ついでに治った症例.そういった症状あってもあまり気にしないひとたちは,やっぱり市中にいるのだということを再認識.あと,嘔吐が抑肝散でひいていったのもそれまでの自分の経験ではなく,勉強になった