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2010年12月22日

054 腹痛 63歳男性

[症例] 63歳 男性
[主訴] 腹痛
[初診] 9月(漢方治療は10月)
[現病歴] 以前から食後に右上腹部が重い感じがあった。初診2日前から胃の右側の痛みに変わり、一日中寝ていた。その後も疼痛続いたため受診した。
[痛みの性質] きゅーっと筋肉がしまる感じ、食後に悪化する
[他症状] 黒色便(+)
[生活歴] 喫煙(-)
[既往歴] 交通事故で頚椎捻挫

[現症] 頭頚部異常なし(眼球黄染なし)、腹部やや満、圧痛(-)、胆嚢ふれず
[検査] 血液検査:異常なし(貧血なし)、腹部超音波:異常なし、上部消化管内視鏡:異常なし(潰瘍、瘢痕なし)
→肝胆疾患は否定的で、胃十二指腸潰瘍もなし、制酸薬での経過観察で腹痛は軽減したが、腹部の違和感残存した。東洋医学で加療をすることとした。

[他症状] ストレス多い。首から上に症状が出るからよく葛根湯を飲む

[漢方所見]
(聞診)か細い声
(舌診)黄苔、舌下静脈正常
(脈診) 右>左

[判断と処方]
器質的な異常からの疼痛ではなく、機能性の異常の可能性が高い
気虚、気滞、気鬱あり
香蘇散7.5g分3開始

[経過]
3週間後、「のみはじめて2〜3日で痛みなおりました。首から上はやっぱり重いですね」
効果があった。相談の上で、症状がきえたため内服中止とした

(感想)
長期間続く腹痛あり、香蘇散を使用したところ3日で改善した症例。腹痛という症状からの処方の選択ではなく、東洋医学的病態を検討したことがよかったと感じた。

2010年05月30日

048 胸痛 38歳男性

[症例]  38歳男性
[主訴] 3年前から時々胸が痛い
[初診] 3月
[現病歴] 3年前心筋梗塞の診断で治療歴あり。その後主治医との関係不良で治
療中断していた。またそのころから、運転中や仕事中、緊張しているときにギューっ
とうずくまりたくなるような胸痛あり。運動負荷で痛くなることはない。心筋梗
塞がほんとうにあったのかどうかよくわからないので調べてほしい、と受診。
[他症状] むくみなし、夜動悸が気になることあり
[生活歴] タバコ20本/日、酒(-)
[既往歴] うつ病(薬物治療中)、片頭痛、直腸ポリープ摘出時に穿孔したことあり
[家族歴] 心筋梗塞複数

[現症] やや肥満
頭頚部正常、胸部雑音なし、腹部 臍部に手術痕、四肢 右足背動脈減弱、
[検査] 高脂血症、胸部X線 心拡大(-)・胸水(-)、心電図 異常なし、ホルター
心電図 異常なし、心エコー 壁運動以上あり(陳旧性心筋梗塞)、心臓カテー
テル 動脈狭窄あり
[漢方所見]
(望診) ストレス多そう

[判断と処方]
心筋梗塞あり。今後の抗血小板療法必要。
しかし、身体的ストレスではなく精神的ストレスでおこる胸痛は心筋梗塞由来と
は考えにくい。
抑うつ、胸痛 から 香蘇散 証と考え、スタチン、アスピリン処方の上で、香
蘇散処方。

[経過]
●1ヵ月後
「胸痛は治まった気がする」
継続。

●2ヵ月後
「ドキドキ、なくなりました。薬って信じてなかったんですが、効くもんなんで
すかねぇ・・・」
香蘇散 終了。再発時は再開することに。

(感想)
抑うつ傾向ある方の 胸痛・動悸に香蘇散はよく効く。抗不整脈薬を長期内服し
ている方は多いが、香蘇散に切り替えれば皆さん楽になると思うのだが・・・

2009年06月25日

039 抑うつ 64歳男性

[症例] 64歳男性
[主訴] 抑うつ
[初診] 3月
[現病歴] 55歳頃から息苦しさがあった.59歳ごろから右背部に鈍痛.63歳ごろから嗄声出現.2ヶ月前肺炎にて入院加療,CT評価にて浸潤影以外に結節影認めた.当院で精査行ったが更なる精査(気管支鏡など)を東京で施行し結果待ち.鏡で扁桃が腫れていることを自覚し,癌ではないかと気になり検査のため当院受診.
「背中の痛みが癌のせいではないかと気になった」「37度前後の発熱がある」(毎日の体温をノートに記載している)
[生活歴] タバコ 30〜40本/日・19〜52歳,ウイスキー少量/日,
[既往歴] 肺炎(48歳),肺気腫(53歳〜),右鎖骨骨折(60歳)
 健康診断毎年受けている

[現症] 体重・身長
 咽頭発赤(-)
[漢方所見]
(望診)細身,活力弱い.問診表の字はしっかりしていて几帳面.
(問診)声弱い
(脈診)沈・細・弱,

[判断と処方]
気鬱が強い.
香蘇散処方.

[経過]
・2週間後
「ようやく景色に色がつきました」(悪性のものなしとの検査結果)
「4年前に首をひねってから右の背中と腰が痛い.X線とってほしい.脳梗塞が心配だから検査してほしい」

X線にて,頚部C5/6骨変形(+),裂隙少

抑うつは癌疑いのストレスからと判断.加療は不要考えた.
針灸紹介,香蘇散はのみ続けたいとのことだったので1か月分のみ処方し飲みきり中止とした.

・2ヶ月半後
「漢方きれたら気持ちの落ち込みが出てきた.またほしい」
針灸通っている.

しばらく香蘇散継続することとした.


(感想)
・咽頭違和感と気鬱症状,几帳面さを考えると半夏厚朴湯でもよかったのかもしれない.

2009年02月21日

027 動悸 73歳女性

[症例] 73歳女性
[主訴] 動悸
[初診] 1月
[現病歴] 夫が末期癌。治療法がないとのことで退院し、娘のところにいる。夫のところにいくと動悸がでて苦しくなる。一番ひどいのはトイレ、冷たい便座に座ると動悸がでる。暖かいと平気。近医の外来で心電図とったけれど何もないと言われた。セルシン処方され様子を見ている。「このまま続くと困る」
[他症状] 喉に痰がらみあり、ゲップすると治る、足冷える、足が冷えると動悸でやすい、左足が痛くて杖をついていた時期あり、
[生活歴] 夫とは不仲、都会出身
[既往歴] 高血圧、高脂血症、CCLでアレルギー
[内服] 動機時セルシン、メバロチン、ノルバスク

[所見]
化粧していない。白髪多い。
右2指に振戦あり、声に力あり、筆圧弱め、
脈 浮、左の脈弱い
舌 淡
腹 心窩部圧痛(+)、臍下軟
足 浮腫(-)、静脈瘤(-)

[判断と処方]
基礎に腎陽虚あり。
肝血虚+気滞 からの症状。

半夏厚朴湯の適応もあるかもしれないが、アレルギーもあり、トラブル少ない香蘇散をまず使用。腎陽虚に対して八味地黄丸の適応もあるだろうが、やはりアレルギーを避けたいので様子を見る

[経過]
・2週後
髪を染め、化粧している
「よくなりました!!!」「ほんとうにうれしくって!」
たまに動悸あったけれど、セルシンのまないでも、深呼吸するとおさまる。
「寒くなると、がんばらなきゃ、と動悸がでます」

脈 浮、輪郭はっきりしているがやや虚
右下腿背側外側・左下腿背内側近位部に圧痛

香蘇散著効。しばらく続ける。
機会をみて八味地黄丸導入。

(感想)
不安の強い動悸に香蘇散は著効する

2008年11月18日

020 軽度の倦怠感 67才男性

症例: 67歳男性
主訴: 夕方になると増強する軽度の倦怠感
初診: 9月
現病歴: 退職後、田舎にIターンし妻と二人暮し。不整脈・高血圧・不眠症を近医循環器でフォロー中。夕方になると力が出なくなり不安感がある。10分に1回くらい深呼吸をする。

「夜すっきり眠れるようになりたい」

他症状: 寝つきが悪い。ふとんに入ってから1時間半は覚醒している。睡眠時間は22時〜6時。昼の眠気はない。
 毎夜1時に排尿に起きる。排便毎日あり。
 山の上の人のいないところにいくと落ち着かない。人ごみが落ち着く。
 明らかな抑鬱なし(食事はおいしい、人生充実感あり、しかし3年前からゴルフにいかなくなった)

内服 : デパス、セロクラール、ノルバスク、シベノール
家族歴: 兄弟が狭心症(バイパス施行)
性格: 几帳面(血圧手帳の記入を1日も欠かしたことがない)

所見:
皮膚 汗(+)
脈 虚・沈
舌 黄苔、やや厚い、舌下静脈(+)、やや暗色
HEENT n.p.
胸 心尖拍動外側に移動、逆流性収縮期雑音3/6、背部に放散
腹 腹力弱、臍下脱力
四肢 浮腫なし

判断と処方:
腎陰虚を強く感じる。根の不安定さを感じる
→六味丸
入眠剤としてアモバン追加。

経過:
4週目、再診。あまり効果ある印象少ない。声の力が弱く、香蘇散証を感じた。
本治で六味丸、標治で香蘇散、としてみることにした。

2ヵ月目、「よくなっていると思う」「運動していても体が軽い」「倦怠感、寝込むこと、がなくなった」「食欲低下することもなくなった」

今後も経過をみて安定したら循環器の主治医にあとのお任せするか、まずは減量を測るか、現在検討中。


(感想)
漢方薬を二つ使うのはまだ難しい。