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2010年02月02日

043 のどがいがらっぽい・左頚部腫脹 43歳男性

[症例] 44歳男性
[主訴] のどがいがらっぽい、左頚部腫脹
[初診] 5月
[現病歴] 3年前からのどがいがらっぽい。ものを飲み込むときにひっかかる。1年位前から左頚部が腫れている。首を前傾すると、喉の前が後ろにあたっている気がする。耳鼻科、消化器科受診し内視鏡行うも異常なし。GERDではないか、とPPI・六君子湯処方されるも改善なく中断。「甲状腺の問題じゃないかと心配」で総合外来受診。
[他症状] 腰椎椎間板ヘルニアを8年前手術したが、昨年から左足のしびれあり(「立っていると刺されるような感じ」)。MRI施行も悪化はないと言われている。姿勢によっては足の甲も痛くなる。5分歩くとつらい。

[現症] 中肉中背、左頚部軽度腫脹も明らかな腫瘤触れず、
[検査] 頚部エコー も異常認めず

[漢方所見]
(望診) 問診表にびっしりと几帳面に書かれている。
(舌診) 特に異常なし
(脈診) 細、滑
(腹診) 上腹部が硬く軽度圧痛あり、左上腹部にしこりあり

[判断と処方]
咽喉頭神経症 疑い。半夏厚朴湯効きそう。問診表にびっしりと書いている点も半夏厚朴湯を示唆する。
⇒半夏厚朴湯を処方。

[経過]
●3週目
「症状改善しました」
継続することにする

●2ヶ月目
「寝汗をかく」
寝汗からは帰脾湯効果ありそうな気がするが様子見とした。

●4ヶ月目
仕事に加えて子供の関係で、夜21時にねて、朝1時に起きる生活を続けていると話してくれる
処方継続

●7ヶ月目
「それ以上変わらずにいる」
手足が冷たくなることはないと。
手の爪が、匙状でありかつ縦筋が目立つことに気づく。
また、食後眠くなるとのこと。

脾血虚がある印象。
寝汗も含めると、帰脾湯効果ありそう。ストレス強いのでその整理も目的に、加味帰脾湯を加えることにする。
半夏厚朴湯を3包→2包へ。加味帰脾湯1包追加

●9ヶ月目
「薬変えてからだいぶ楽になりました。今の症状は初めのころの3割くらいです。まだいがらっぽさはあるけれど、詰まった感じはなくなった」
今の処方をしばらくつづけることにする。いずれ加味帰脾湯の増量も検討。


(感想)
咽喉頭神経症、と考えて半夏厚朴湯をつかったがそれのみではよくならなかった症例。振り返ってみれば、半夏厚朴湯のみで治る患者さんのようなストレスの強さや張り詰めた感じは弱く、ストレスで弱っている印象を受けていた。そのような患者はやはり加味帰脾湯を加えるべき。

2010年01月21日

051 爪が紫色

[症例] 30代男性
[主訴] 爪が紫色
[現病歴] 以前より消化器弱く,慢性鼻炎あり,手足冷え性,雨天時・疲労時にしばしば関節炎発症するため,脾気虚と診断され,ときおり人参湯・よく苡仁湯で治療していた.爪が紫色であることを指摘されたため治療を思い立った.

[現症] 中肉中背
[漢方所見]
(舌診)腫大,舌質 淡、舌下静脈 怒張傾向

[判断と処方] 脾気虚に加え,脾血虚もあるため末梢に栄養がいっていないと考えられた.
帰脾湯での加療を選択.

[経過]
数日後,動けないほどの頭痛に悩まされるようになった.疲労のためかと思ったがなかなか改善せず.
帰脾湯で補うだけで整理できていないためではないかと考え,加味帰脾湯に変更.その後,頭痛発症せず.2週ほどして,末端まで紫色だった爪が中央以端は肌色に変化.中枢側はいまだ紫色.
ほか,体に明らかな変化は見られない.

(感想)
やはり自分.隊長に乱れがあるとき,その乱れを整理をせずに補うだけでは状況悪化もありうることをわが身で体験.しかし,所見はなおっても体調よくなるという自覚が得られないのは,いいのかなぁ,とも思いつつ.数値がよくなるが予後はべつによくしない多くの高脂血症治療を思い出している.どこか自覚のない場所でいいことがおきているのか?よくわからない.