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2008年09月20日

017 るいそう 70代女性

症例: 70代女性
主訴: るいそう
初診: 7月
現病歴: インフルエンザと低カリウム血症による脱力にて入院、自分で加療した患者様。その3ヵ月後に、半年で52kgから40kgへの体重減少あるとのことで紹介受診。

他症状:
・CA19-9 45と上昇と便潜血陽性みられた
・エコー、CT、胃カメラなどでの全身精査も異常見られず。高齢であったため大腸カメラは施行しなかった。

生活歴: 夫は1年前に他界、一人暮らし

処方と経過:
消化機能低下とのことで、精査をしつつ六君子湯を処方。
2ヶ月で43kgへと体重増加に転じたため、またこれそれ以上の西洋学的精査を望まれなかったためあとのフォローは主治医にお願いすることとした。
半年後、経過良好とのことをきいている

(感想)
消化機能の低下に対する六君子湯の効果を強く感じた症例

016 嘔気 20代男性研修医

症例: 20代男性研修医 
主訴: 嘔気(ウイルス性胃炎)
初診: 7月
現病歴: 二日ほど前から嘔気あり食欲無く、飲み会など休んでいた。嘔吐は無かった。

所見:
全身活気なし。顔色悪い

処方と経過:
ウイルス性胃炎と判断。二陳湯をあげた。
30分ほどで「よくなりました!」
顔色もよくなった。

(感想)
ウイルス性の疾患には、やっぱり漢方の方が切れ味がいい。

015 胃痙攣・背部痛 70歳女性

症例: 70歳女性
主訴: 胃痙攣・背部痛
初診: 7月

現病歴: 左手に放散する、冷や汗を伴う強い左前胸痛あり、入院精査。しかし痛みはすぐに改善し、器質的も異常見つからず。胃痙攣の診断で退院となった。しかし、東洋医学的に全身の体調不良認めたため外来にて治療開始となった。また、退院後鍼灸に行ったところ、「やるとおしっこがよく出る。次の日までだるいけれどそのあととても調子がいい」とのこと。

既往歴: サルコイドーシス、ガングリオン、高血圧、狭心症(根拠は不明、未治療)
性格: まじめ、働き者、我慢強い

所見:
・右肋骨から心窩部にかけて違和感あり
・首肩筋肉緊張、背部右Th10レベルに圧痛あり、背部左L1レベルに圧痛あり

処方と経過:
水毒による体調不良と考えた。年齢から血虚、腎虚もあると思われるので、それら三つを同時に改善する当帰芍薬散処方。

→1ヵ月後
「食欲がでてきてこまっちゃう」
「右の背中のはりがなかなか消えない」
「母が飲ませてくれた薬にそっくりなにおいで、母を思い出しちゃった。同じ薬なのか?」
「まずくないです」
「のむとそのあと体がすごくあったかくなるんです。おしっこが増えるんです」
「扇子、扇風機の風にあたるとすぐ喉が痛くなるの。すぐ40度出ちゃう」
「イライラしなくなってきた気がする。前はちょっとしたことでくよくよ考え込んでいたのに」

舌: 暗赤色、やや胖大、舌下静脈+++

(感想)
振り返ると、消化器中心に水毒がたまり、症状を引き起こしていた様子。鍼灸、当帰芍薬散で水毒をさばきつつ、同時に体力を補ったため全身状態が改善したと考えられた。風邪に弱い体質はどうすれば治るのか、様子をみていく。

014 易疲労感・めまい・耳鳴り 80歳女性

症例: 80歳女性
主訴: 易疲労感・めまい・耳鳴り 等
初診: 6月

現病歴: 25年前の外傷後、めまいと耳鳴り出現。50日入院して加療するも耳鳴りは一生続くと言われた。特に今年になってから右耳が耳鳴りでぜんぜん聞こえなくなった。最近少し動くと疲れる。右の肩甲骨の下が痛くなる。右膝が痛くなることあるので時々ヒアルロン酸の注射を整形外科でしてもらっている。

他症状:
・尿は近い、尿失禁しばしばあり、夜1〜2回トイレに起きる

既往歴:
・不整脈(SSS ペースメーカーあり)
生活歴:
・タバコ(-)、酒(-)

所見:
・生気の無い顔、全身元気ない、声小さい
・難聴
・口唇 紫
・心窩部硬く圧痛あり、右下腹部軽度圧痛、臍下脱力

処方と経過:
・所見から鬱血や消化機能の低下が目立ったが、倦怠感や難聴や膝疼痛から根本は腎陽虚と考え、八味地黄丸選択した。

→1ヵ月後
「肩甲骨の下の痛みがなくなりました」
「1週間薬のんだら胃がおかしくなった気がして1週間のむのをやめた。でも娘に言われて少し量を減らして呑み続けている」
「右の膝、左の腿の上にのせられなかったのがのせられるようになった」
「なんとなく元気が出るようになって来た気がする」

地黄による消化器症状一時期出現するも、体が慣れて回復した。効果はあるようなので続行とした

(その1週後 めまいあり救急で他医を受診)

→2ヵ月後
「今も右を下にしてねるとめまいがおきる。右が耳鳴り強い」
「膝の痛み楽になって正座が少しできるようになった」
「肩も痛い。それでめまいがおきているのか? 畑をやると右肩が痛くなる」
「薬をのむと効いたような気がする」

脈: 虚
口唇: 紫

八味地黄丸の効果はでているのだろうが、めまいが続いているので頭部の水毒をさばく苓桂朮甘湯で1週間様子診ることにする。漢方だけでなく、即効性のある鍼灸にも通ってもらうことにする。

→2ヶ月と1週後
(その1週の間に膀胱炎あり泌尿器で治療を受けていた)
「めまいは減ったけれどまだある」
「鍼灸やったらめまいは2〜3日でよくなった。肩こりがなくなって楽」
「いいサプリメントないかな」

息子の話では、鍼灸に行くのは嫌がっていたが息子の説得で行ってみたとのこと。それがよく効いて、行ってみて喜んでいるとのこと。

サプリメントのようなものとして八味地黄丸をだしていると説明し、続行。

→3ヵ月後
「鍼灸やったらめまいがなくなった!!」(とても喜んでいる)
「肩も、少しいいと草むしりとかしちゃって肩が痛くなることもあるけれど、湿布しなくてもよくなりました」
「疲れやすくなくなった」
「耳鳴りは20数年も続いているし、消えない」

足が軽そう。表情も柔らかい

脈: 中庸
舌: 紫、舌下静脈怒張

効果も安定してきたので2ヵ月後のフォローとした


(感想)
漢方薬と鍼灸の効果をなかなか納得してもらえなかったが、基礎体質(体力、膝痛)が改善できたと考えられた。

2008年09月14日

013 動悸・肩こり 約45才女性

主訴: 動悸感・肩こり
症例: 約45才女性

現病歴: 1ヶ月前から肩から背中にかけて横になりたいほどの異常な痛みあり。マッサージも磁気ネックレスも効果なし。また同時期から、夜落ち着いてテレビを見ている時などに、一瞬息をのみたくなるような動悸感が頻回にある。心臓疾患が気になり心エコー目的に受診。

既往歴: 喘息(現在未治療)、縦隔気腫(20才)
     人間ドッグは陰性
内服: 現在なし

身体所見:
脈 やや沈 虚 細
舌 白薄苔 舌下静脈軽度怒張
腹 下腹部に違和感ありやや硬い 圧痛はない
性格 明るく笑顔多い

評価: 加味逍遥散証 と考えた
 (更年期、肩こり、奔豚気 から)

その後:
3回内服後、肩こり完全に消失
動悸感はその後しばらく残存したが、2週間後に消失


感想:
いわゆる不定愁訴、に漢方薬は即効性があるときもある!