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2008年11月18日

021 3〜4年続く強い背部痛 53歳女性

症例: 53歳女性
主訴: 背部痛
初診: 9月

現病歴: 3〜4年前から背中に痛みと凝りがある。夜仰向けに寝ることができない。医療機関で精査するも特に異常なく、温泉・鍼・体操も一時的にしか効果ない。
 痛みは背中中央。背中を鷲づかみにするような筋肉が収縮するような痛み。夜中に目が覚める。背中を丸めないと寝れず、朝起きると体中がこわばっている。

他症状: 右手中指・薬指に痺れがある

既往歴: なし
生活歴: 喫煙 15本/日、飲酒(-)
家族歴: 母RA、父再生不良性貧血

所見:
全身元気。
右肩甲骨内側に圧痛あり。右手3-5指間にこわばりあり
腹部 心窩部に圧痛(+)、臍右下に圧痛(+)
頭痛なし

舌 白色の苔多、やや黄色
脈 やや浮く、細


判断と処方:
右心包系の痛みと考えられる。消化器・循環器の機能低下も考えられる
全ての症状の治療を開始しても難しそう。全身倦怠感強そうなのでまずは消化器機能を整えることとした。
→六君子湯処方

経過:
(1ヵ月後)
・胃の方はほんの少しよくなった気がするけれど、背中はよくならない
・胃、ちょっと動き出したかな、と思う
・背中にすごく汗をかく、そのあたりからいつも冷える
・肩首筋が凝る

→風門の冷汗と筋肉痛から葛根湯証と考え、追加で処方

(2ヵ月後)
・背中の痛みから、肩こり・腰痛といった風邪をひいたときのような痛みになった
・よくなってきた気がする
表情よい

→効果あったと判断。冬は違う地域で生活されているとのことなので、3か月分処方。痛みつづいていたら春から再診とした

(感想)
4年続く痛みを漢方をつかうとなおせるのは、こっちもうれしい

020 軽度の倦怠感 67才男性

症例: 67歳男性
主訴: 夕方になると増強する軽度の倦怠感
初診: 9月
現病歴: 退職後、田舎にIターンし妻と二人暮し。不整脈・高血圧・不眠症を近医循環器でフォロー中。夕方になると力が出なくなり不安感がある。10分に1回くらい深呼吸をする。

「夜すっきり眠れるようになりたい」

他症状: 寝つきが悪い。ふとんに入ってから1時間半は覚醒している。睡眠時間は22時〜6時。昼の眠気はない。
 毎夜1時に排尿に起きる。排便毎日あり。
 山の上の人のいないところにいくと落ち着かない。人ごみが落ち着く。
 明らかな抑鬱なし(食事はおいしい、人生充実感あり、しかし3年前からゴルフにいかなくなった)

内服 : デパス、セロクラール、ノルバスク、シベノール
家族歴: 兄弟が狭心症(バイパス施行)
性格: 几帳面(血圧手帳の記入を1日も欠かしたことがない)

所見:
皮膚 汗(+)
脈 虚・沈
舌 黄苔、やや厚い、舌下静脈(+)、やや暗色
HEENT n.p.
胸 心尖拍動外側に移動、逆流性収縮期雑音3/6、背部に放散
腹 腹力弱、臍下脱力
四肢 浮腫なし

判断と処方:
腎陰虚を強く感じる。根の不安定さを感じる
→六味丸
入眠剤としてアモバン追加。

経過:
4週目、再診。あまり効果ある印象少ない。声の力が弱く、香蘇散証を感じた。
本治で六味丸、標治で香蘇散、としてみることにした。

2ヵ月目、「よくなっていると思う」「運動していても体が軽い」「倦怠感、寝込むこと、がなくなった」「食欲低下することもなくなった」

今後も経過をみて安定したら循環器の主治医にあとのお任せするか、まずは減量を測るか、現在検討中。


(感想)
漢方薬を二つ使うのはまだ難しい。

2008年11月01日

019 49歳女性 心窩部の重苦しさ・易疲労感・下肢のむくみ

症例: 49歳 女性
主訴: 心窩部の重苦さ・易疲労感・下肢のむくみ
初診: 7月
現病歴: 約1ヶ月前から心窩部の重苦しさが出現。息も苦しく、疲れやすく、むくみも出やすくなった。夏は仕事で忙しいのでその前に治療したいと受診。

既往歴:
・橋本病(3年前に指摘されたが治療するほどではないといわれた、その頃も息苦しさ感じるも心電図で異常ないといわれた)
・虫垂炎(中学生)
家族歴: 父 前立腺癌、母 原発性胆汁性肝硬変
社会歴: 喫煙(-)、ビール350cc/day

他症状:
 むくみは朝に顔に強く出る、脚に夕方でる、臥位で息苦しさなし、夕方や長時間歩いたあと息苦しくなる、吸うときに息苦しい
 冷え(+)、便1日1回、尿近い(1〜2時間に1回)が夜尿に起きることなし、食欲正常、体重は3年で5kg増えて59kg、月経は半年前に終わった
 汗ではじめるととまらなくなる、寝つきはいいけれど夜中に起きること多く3〜4時間で目が覚める、
 気分がふさぐことあり
 3ヶ月くらい前から右手がしびれる

所見:
 全身状態良好、笑顔あり、
 脈 沈・遅・右>左
 舌 淡・薄白苔・舌下静脈怒張

 HEENT 異常なし、甲状腺触れず
 胸部 異常なし
 腹部 軟、腹力弱、心窩部軽度圧痛あり、臍上部に動悸触れる、下腹部の圧痛(-)
 四肢 浮腫(-)、右手首ティネル(+)

 心電図 異常なし
 採血 高脂血症あり(総コレステロール 256)、甲状腺・腎機能異常なし、
 
処方と経過:
 息苦しさがあること、汗が止まらなくなること、下腹部に所見がないことから、当初は肺気虚と考えて補中益気湯処方
 右手首は湿布で対応


→1ヵ月後受診
「疲れているわりには眠れない日もある」
「胸の重苦しさ、息苦しさは気にならなくなった」
「汗、なかなかでないが出始めると止まらない」
「夜中に起きてしまうこと、回数は減ったがある」
「手の痺れは消えた」

体重 56.5kg

状態良くなってきているので補中益気湯継続


→ 2ヵ月目
「夜は眠れるようになってきた。朝3〜4時におきてしまうことあっても、夜中におきることはなくなった」
「だるさは変わらない」「むくみと息苦しさは以前ほど気にならなくなった」
「汗はかきだすとやはりとまらない」「毎朝疲れがとれていない」
「だるくて、仕事がやりたくない、とおもってしまうのがすごく嫌だ。前みたいに楽しく仕事がしたい」

補中益気湯の効果少ないと考え、更年期障害でやや虚証であることから当帰芍薬散に変更。むくみに対しても効果を狙った


→ 3ヵ月目
「今度の薬でむくみは取れやすくなった」
「今度の薬は気持ちが落ち着く。前の薬は気持ちは元気にはなるけれど、焦る感じがでた。今くらいがちょうどいい気がする」
「汗かかなくなった」「朝疲れが取れない感じは気にならなくなった」

しかし、当帰芍薬散ではなく補中益気湯を希望するとの電話が薬局より。なぜか?
そろそろ薬の減量を考える時期と考えながら、状況を患者さんに教えていただく。