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2008年12月07日

023 腹痛 72歳女性

[症例] 72歳女性
[主訴] 腹痛
[初診] 11月
[現病歴] 7年前からときどき腹痛あり当院受診していた。ストレスで増強。狭心症の疑いにて性差入院もあった。最近は腹痛発作少なくなっていた。1週前から心窩部痛あり。救急外来、内科外来受診しH2ブロッカー処方されるも軽減せず。徐々に像悪。傾向摂取量も減っていたため栄養剤を内服していた。救急外来で投与された抗コリン薬効果あり。治療目的に当科再受診。
[他] 切られるような持続痛、放散痛(-)、臥位で増強、うつ伏せで楽になる
 便は昔からゆるい、関節痛(-)、口に唾がたまることはない、足軽度の冷え性、水は多めにのむようにしている、
[既往歴] 喘息
[生活歴] ストレス多、夫が脳梗塞
[所見] 痩せ型
舌 白苔が中央剥がれている(「昔から」とのこと)、胖、歯痕(-)、舌下静脈軽度
腹 心窩部に圧痛(+)、大動脈拍動強、全体に軽度の圧痛

[判断と処方]
ストレスからの過敏性腸症候群
桂枝加芍薬湯+抗コリン薬

[経過]
●1週目
「漢方薬は飲んだ後スッとする。続けたい」
痛み変わらない、抗コリン薬2回飲まないとダメ
皮膚に湿疹が出る、痛みが強いときに出る傾向がある。背部と手に出る。顔・腹・足にはでない(受診時みられず)
食べれないから栄養剤がほしい
ドリンク剤のむと、飛んで歩けるくらい元気になる。4時間くらい

●2週目
だんだんいい方向。しぶり腹もあったが落ち着いてきた
たべれるのはおかゆ少しと栄養剤だけ
湿疹はだいぶ減った

脈 細
舌 紅・中央の苔なし(境界不明瞭)

消化管の痙攣抑えるだけでなく、消化管の基礎状態を整えたほうがよさそう
飴を加えた小建中湯に変更

●3週目
おかゆたべれました!! 何も痛くない! 2日前から何かすっきりしてきたんです。食べる量も種類もだんだん増えてきた
「2袋ごはんの前に飲むと、げっぷもおならもよく出るんです。そのげっぷが気持ちいいの。前はそれがでなくてつまっちゃってくるしかった…

脈 右>左  寸が弱い、関・尺 虚細
舌 やや赤い、厚いが歯痕(-)
腹 上腹部動悸(+)、腹力弱

●4週目
すごく調子いいです! 痛みなくごはんたべています。ご飯が食べれるってほんとうに素敵ですね!!

脈 左の関が弱い。寸が強くなってきている

抗コリン薬を減らしつつ回復を待つ。
小建中湯の減量をそろそろ考えていく


(感想)
・15人くらいの医師を受診し、時に循環器精査されるほどの腹痛続いていたが、漢方薬ですっきりなおった。時々このように、西洋医学では気持ちの問題と放置せざるを得なかった症状を、患者さんが感動するくらいすっきり治すことが漢方薬である。西洋医学のみで治療できることがたいせつだ、といわれるけれど、こういうことがあるから漢方薬をつい使ってしまう。実際、西洋医学のみでは治らない病気はほんとうは多いのだし…

022 体がほてる 59才男性

022 体がほてる 59才男性

[症例] 59歳男性
[主訴] 風邪が治らない、体がほてる
[初診] 11月
[現病歴] この6〜7年、10月になると風邪を引くが、あったかくしていると痰がものすごく出て楽になる。今年はなおりきらなくて気持ちが悪い。体がほてってしょうがなくて、布団を蹴飛ばし、寒くて目が覚める。みぞおちも気持ち悪くて胃カメラしてもらったが何もなかった。10年前の喀血したときの症状に似ている。夜口をあけてねていると、肺の奥までかわいたかんじになる
[他症状] 咳は夜でる。それほどでないが、出始めると止まらなくなる、鼻水(-)、便:軟・硬が交互に出る、食欲・睡眠良好、尿:夜0〜1回、年に1回、1ヶ月間くらいほてることがある
[既往歴] 胃潰瘍(ピロリ除菌歴あり)、虫垂炎、高血圧(内服加療中)
[生活歴] 一人暮らし

[所見]
舌 淡、ややむくみあり、歯痕軽度
腹 上腹部にやや違和感

胸X線、血液に炎症所見なし

[判断と処方]
咳よりもほてりがつらいとのことなので、それに対応してみる

白虎加人参湯処方

[経過]
●2週後
「あの薬のんで調子いい、ほてりほとんどなくなった」「1週間3包のんだけれど、そのあと2包に減らした」
「かわきはちょっと減った気がする」

2週間追加処方し、あとは自己調整にて対応していただくこととした

(感想)
・ほてりは西洋薬だと対処法ないが、興味深い