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2009年04月04日

033 不眠 39歳男性

[症例] 39才男性
[主訴] 不眠、足裏のほてり、動揺感、胃の不調、眼精疲労
[初診] 1月
[既往歴] 小児喘息、虫垂炎、十二指腸潰瘍(20歳)、アレルギ―性鼻炎(3・4月と秋)
[現病歴] 10ヶ月前人間ドッグで癌疑いと告げられ10日くらい悩み体調不良に。結局胃潰瘍だったのだが体調不良が治らない。近医でレンドルミン、ドグマチール、竹じょ温胆湯処方されたがよくならず。
[随伴症状] 夜間頻尿(-)、便毎朝、睡眠 11時〜4時起床(前は7時まで起きることなかった)、冷え(-)、腰痛(-)、関節痛(-)、臥位での咳(-)、胃もたれ時に、暖かい飲み物好き、飲水量は少ないほう
[家族歴] 父 肺癌
[生活歴] タバコ(-)、酒(-)、仕事 機械工
[現症] 体重・身長 中肉中背
西洋医学的に明らかな異常なし

[検査] 血液検査異常なし

[漢方所見]
(望診)中肉中背
(舌診)苔白薄、細かい唾液の泡(+)、舌下静脈(-)
(脈診)右 浮沈中間弱、左 沈
(腹診)左胸脇苦満

[判断と処方]
大きな器質的異常なし

ストレスを契機とした体調不良
抑肝散 開始

[経過]
●1ヵ月目
大きな変化なし、冷え有、クラクラがたまにあり、車酔いのような吐きっぽいのがときどきあり
食欲は戻った、1年続いた胃部不快感消失
最近疲れやすい。客と話すとき集中力落ちた感じ、すぐ座りたくなる
夜目が覚めてしまう

(望診) 気遣い多い、びくびくしている
(舌診)舌質暗、唾液(++)・粘性
(脈診)右 浮沈中間弱、左 沈
(腹診)胸脇苦満消失、臍下不仁(+)・臍下冷感(+)

腎陰虚、ストレスに弱そう、不眠症
→ 桂枝加竜骨牡蛎湯、中期作用型ベンゾジアゼピンも追加

●2ヶ月目
「日ごと体調よくなってきている!」
よく眠れる。ほてり改善してきた
(感想)
桂枝加竜骨牡蛎湯自分のからだに使ってみていい印象はなかったのだが、やはりきっちりあうとよく効く!

032 頭痛 28歳男性 柴胡加竜骨牡蛎湯など

037 頭痛 28歳男性

[症例] 28歳男性
[主訴] 頭痛
[初診] 12月24日
[現病歴] 以前から1ヶ月に1回,20秒程度の頭痛があったら最近増悪してきていた.4日前から左即頭部痛発症.夜になると増悪.今回は痛みが残り,痛みで倒れこむことある.内科受診しNSAID処方,脳外科受診し頭部CT異常なし。近日MRI取る予定.頚椎異常からの頭痛が心配で受診.
[他症状] 頭部を動かしたときに「ピキピキ」と痛む.じっとしていると平気.
冷え症、唾液多い、食後眠くなるときある、水はよく飲む,トイレに行く回数が多い,便,3〜4ヶ月前から便の出悪くなってきた.
 4年前に職場が変わってから目の隈ひどくなった
[生活歴] ホテルマン
[既往歴] 左額・幼少時外傷・髄液漏あったため手術歴あり(頭蓋骨に穴があいている))

[現症] 体重 88kg(20歳時107kg)
 体温 36.9℃,血圧 110/69 mmHg, 脈 68
 Jolt(-),歩行障害(-),動作障害(-)
四肢 指の爪をかんだあと目立つ,
 腹 皮膚線状目立つ,臍左横に手術痕
 線維筋痛症 triger point(++)
[検査] 
 一般血液検査異常なし,副鼻腔CT異常なし,
[漢方所見]
(望診)はきはきと話をされる.表情暗くはない,神経質そう
    目の下の隈が目立つ
(舌診)苔 黄、舌質 先端紅・胖大、舌下静脈(++),歯痕(++)
(問診)声質正常
(脈診)沈,右>左
(腹診)圧痛(-)

[判断と処方]
明らかな器質的異常なし.
感冒の一種か? 神経質そうな外見や脈からはストレス性とも感じる.
機能性頭痛(偏頭痛、群発頭痛、筋緊張性頭痛)としては非典型的。
筋肉痛も目立つので葛根湯で様子見.NSAIDも処方.

[経過]
・1週間後
「2日目,3日目の頭痛がひどかった.が,楽になってきた」「最近よく汗をかく」
「薬飲んでいる。少しおさまってきた気がする」

表情明るい
舌 苔黄、先端紅、
左胸脇苦満(+)
全身の繊維筋痛症のトリガーポイント陽性

小柴胡湯証に変化してきた気がしたが、葛根湯効果ありそうだったので葛根湯をもう1週継続

・2週間後
「楽になってきたが今も時々痛い」
「痛くない日もあるが…。痛みで倒れることはなくなった。
 スポーツするとすっきりする。肩こりはだいぶ楽。軽い。
 目の隈は、4年前に職場が変わってからひどくなった」

脈 沈 特に左が弱い
舌 歯痕(++)、唾液多い、裂紋少

頭痛改善しない
体格のわりに脈が弱すぎる。病歴から脾虚あり。

補脾に人参湯7.5g開始
葛根湯に,人参湯を加えて補うことにする鍼灸院も紹介。

・3週間後
「2日前に最初の頃と同じくらいのひどい頭痛があった.あとは元気」
「便の回数が1回/2日にへった.尿の回数とても減った」
鍼灸院には行っていなかった

腹 両肋骨窩圧痛(++),心窩部ややへこみ(+)圧痛(+)
頭頂部軽度脱毛

風邪ではない。柴胡加竜骨牡蛎湯証と判断。
葛根湯・人参湯中止。
柴胡加竜骨牡蛎湯(大黄(+))7.5g開始

・4週間後
「少しずつよくなった気がする.前日頭痛発作あった」「飲むと便がよく出る.快便」
両肋骨窩圧痛(+),臍の斜め左右上下に圧痛軽度

効果ありそう,柴胡加竜骨牡蛎湯続行.

・2ヵ月後
「転職した」「頭痛まだあるが,マッサージされるとき程度に改善」
「自分でもよくなってきているんだろうな,と思う」
「ストレスたまらなくなった気がする」

脈 沈,ただし今までより浮いてきた印象
舌 淡 舌下静脈(+)
腹 圧痛点消失 「押されると気持ちいい感じがします」

薬続行.

・3ヵ月後
「頭痛消えた,通じもいい」「あれ効きますね,気の持ちようがよくなった.体もよく動くようになった」
腹 臍左横手術痕部に押して気持ちいい場所あり.5分ほどおさえるとしこり消えた

よくなるまで薬続行とする.

・6ヵ月後
「薬が効かなくなってきた.便通1回/3日に減った.便は普通の硬さ,出ないと硬くなる」「今の薬は気持ちを楽にしてくれる.あれがなかったらどうなったことか...」

左大衡,左下腿外側近位端,臍左脇に鍼施行.「とても気持ちいい」

柴胡加竜骨牡蛎湯に調胃承気湯を追加してみる.

(感想)
・初めの頃,腹部所見明らかなもの無かったのに,だんだんと明瞭化してきた.葛根湯で動かしたせいか? その後も腹診所見がコロコロと変わった.若い患者は変わりやすいのか?
・補うことが今後必要か?
・柴胡加竜骨牡蛎湯は、若いストレスの多い男性には効く印象