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2009年06月25日

039 抑うつ 64歳男性

[症例] 64歳男性
[主訴] 抑うつ
[初診] 3月
[現病歴] 55歳頃から息苦しさがあった.59歳ごろから右背部に鈍痛.63歳ごろから嗄声出現.2ヶ月前肺炎にて入院加療,CT評価にて浸潤影以外に結節影認めた.当院で精査行ったが更なる精査(気管支鏡など)を東京で施行し結果待ち.鏡で扁桃が腫れていることを自覚し,癌ではないかと気になり検査のため当院受診.
「背中の痛みが癌のせいではないかと気になった」「37度前後の発熱がある」(毎日の体温をノートに記載している)
[生活歴] タバコ 30〜40本/日・19〜52歳,ウイスキー少量/日,
[既往歴] 肺炎(48歳),肺気腫(53歳〜),右鎖骨骨折(60歳)
 健康診断毎年受けている

[現症] 体重・身長
 咽頭発赤(-)
[漢方所見]
(望診)細身,活力弱い.問診表の字はしっかりしていて几帳面.
(問診)声弱い
(脈診)沈・細・弱,

[判断と処方]
気鬱が強い.
香蘇散処方.

[経過]
・2週間後
「ようやく景色に色がつきました」(悪性のものなしとの検査結果)
「4年前に首をひねってから右の背中と腰が痛い.X線とってほしい.脳梗塞が心配だから検査してほしい」

X線にて,頚部C5/6骨変形(+),裂隙少

抑うつは癌疑いのストレスからと判断.加療は不要考えた.
針灸紹介,香蘇散はのみ続けたいとのことだったので1か月分のみ処方し飲みきり中止とした.

・2ヶ月半後
「漢方きれたら気持ちの落ち込みが出てきた.またほしい」
針灸通っている.

しばらく香蘇散継続することとした.


(感想)
・咽頭違和感と気鬱症状,几帳面さを考えると半夏厚朴湯でもよかったのかもしれない.

038 こむら返り 76歳女性

[症例] 76歳女性
[主訴] こむら返り
[初診] 5月
[現病歴] 脊髄症両足底部痛,両臀部痛に対し腰部脊柱管狭窄症を71歳で手術.頚髄症も存在していたが症状悪化したため74歳で頚椎後方徐圧術施行.その後,両手の痺れは改善したが,下肢の冷感・痺れは著変なし.右手指先部の痺れも継続した.腰部再手術を行い,下肢疼痛軽減も残存し,整形外科受診を継続していた.鍼灸でも加療されていた.
「お風呂に入ったとき,足がいつもけいれんする.前は寝ているときに息もできないくらいいつもけいれんした.今は少し治った」
「足裏何かはいている感じ.鍼灸かよって戻りつつある」
[他症状] 
 冷え強く夏でも炬燵を使っている.下剤あまり効かない,尿の出遅い,
[既往歴] 高血圧,便秘,不眠症,GERD,飛蚊症,頻尿

[内服]
降圧薬(Ca拮抗約,ARB),下剤(センノシド,酸化マグネシウム),睡眠薬(短期作用型),桂枝加朮附湯,血管拡張薬(オパルモン),ビタミンB12,湿布

[現症] 体重・身長
 血圧 134/77,脈 80, 体温 35.9℃
 結膜貧血(-)
 肩こり後背筋に強い
 下肢浮腫(-),両足を持ち上げると痛がる,足底紫色「痛いときは赤くなる」
[漢方所見]
(舌診)苔 やや黄色・厚め、舌質 やや暗、舌下静脈(+)
(脈診)右<左,渋・沈・弱,
(腹診)満,圧痛(-)

[判断と処方]
血虚からのこむら返りと考えられた.寒邪も強そう.

養血し温めることを目的に,桂枝加朮附湯も出ているので基本的な四物湯を処方.こむら返りに頓用で芍薬甘草湯.

[経過]
・3週間後
「おかげさまでいままでになくいいです.今までは朝は寝っきりだったけれど,今は体があったかくて楽.自分の足じゃなかった感じも戻ってきた」「芍薬甘草湯は10回くらいつかった,使うとすぐ治る」「便でにくい」

舌 やや大・紅,苔消失,舌下静脈怒張

四物湯継続.

(感想)
・疎経活血湯のほうがいいのかもしれない.今後の様子見.便秘もあるので,大建中湯でおなかの中から温めると,消化管の動きも全身状態もよくなるのかもしれない.様子見ていく.

036 変形性膝関節症 74歳女性

[症例] 74歳女性
[主訴] こむら返り,変形性膝関節症
[初診] 4月
[現病歴] 左膝変形性関節症あり,鍼灸院受診,2回で痛み取れていた.こむら返りあり,当科紹介受診した.
[他症状] 腰から下の冷え性あり(第三子産んだときに出血多量だった.以後冷え性あり.板の上など寒くて座れない.夏でもカイロを使っている)
発汗少ない(夏も),肥満(+),足むくむこと少ない,水分摂取多い,夜トイレに1回おきる
[既往歴] 高血圧,不眠症,頚椎捻挫,左腋粉瘤,足白癬,
「主人の7回忌が終わってからヨロヨロになっちゃって...」

[現症] 肥満体型
 両手指DIP変形(++)(へバーデン結節),左膝クリック(+),ほか身体診察上明らかな異常なし

[漢方所見]
(望診)肥満体型,動きに異常なし
(舌診)白苔・乾燥傾向、裂紋(+++)、舌下静脈怒張(++)
(脈診)浮,細
(腹診)満,全体的に圧痛(+),気海にカイロをはっている

[判断と処方]
西洋医学的には変形性関節症,冷え性と診断.
東洋医学的には気虚を基礎とした,湿邪と腎陽虚.
防巳黄耆湯と牛車腎気丸を処方.

[経過]
・2週間後
「おしっこの出いい」「からだが軽くなった気がする」「両足まだ痛い」

補気良好,経過良好.

・2ヵ月後
「調子はえらいよくなった.足あったかい.カイロ要らなくなった」「肩こりなくなってきた」「まだどうしても左膝がつれる」
舌 裂紋(+++, 「せんべいとかしみる」),
腹 圧痛消失

経過良好.舌所見の改善を目標に,今後加療継続予定.


(感想)
・鍼灸との併用は,副作用の出をおさえる印象ある.経過がいい.
・漢方は補法が得意と感じる