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2010年01月29日

042 息切れがする 43歳女性

[症例] 43歳女性
[主訴] 息切れがする。思い切り息ができないかんじ
[初診] 11月
[現病歴] 約1ヶ月前から階段を3階分のぼったら息が切れたのが始まり。この1ヶ月、思い切り息が出来ない気がする。事務作業をしていても、喉の辺りの異物感あり深呼吸できない気がする。
[他症状] 時々咳が出る
頭痛:月経前後、鼻炎(-)、ひえ(-)、のぼせ(-)、むくみ(夕方少し)、痛み(-)、睡眠・食事・尿・便 正常、子供と妹の死亡でのストレスあり
[生活歴] タバコ10本/日、アルコール ビール700cc/日
[既往歴] なし
[家族歴] 妹 子宮頸がん、妹 詳細不明の腎不全で腎移植

[現症] 体重・身長 中肉中背(やややせてる)
[検査] 甲状腺触れず
[漢方所見]
(望診) 全体的に元気ない、声が弱弱しい、表情には鋭さある
(舌診) 正常
(腹診) 正常

[判断と処方]
@COPD、A喘息、B食道咽喉頭神経症 を考えたが、Bが最も可能性高そう
ハンゲコウボクトウ処方

[経過]
●3週後
「息苦しさはだいぶ楽になった。階段も苦労ない」
表情はまだ暗い
処方継続

●2ヵ月後
「喉の詰まったかんじはほとんどない。ときどきドキドキする」
「タバコとお酒はやめられた! ただちょっとふとった」
良好。症状再発したら飲むための10日分のみ処方し、フォロー中止。

(感想)
典型的なハンゲコウボクトウ証。ストレスがのぞければ根本的にはいいのだが…

2010年01月21日

051 爪が紫色

[症例] 30代男性
[主訴] 爪が紫色
[現病歴] 以前より消化器弱く,慢性鼻炎あり,手足冷え性,雨天時・疲労時にしばしば関節炎発症するため,脾気虚と診断され,ときおり人参湯・よく苡仁湯で治療していた.爪が紫色であることを指摘されたため治療を思い立った.

[現症] 中肉中背
[漢方所見]
(舌診)腫大,舌質 淡、舌下静脈 怒張傾向

[判断と処方] 脾気虚に加え,脾血虚もあるため末梢に栄養がいっていないと考えられた.
帰脾湯での加療を選択.

[経過]
数日後,動けないほどの頭痛に悩まされるようになった.疲労のためかと思ったがなかなか改善せず.
帰脾湯で補うだけで整理できていないためではないかと考え,加味帰脾湯に変更.その後,頭痛発症せず.2週ほどして,末端まで紫色だった爪が中央以端は肌色に変化.中枢側はいまだ紫色.
ほか,体に明らかな変化は見られない.

(感想)
やはり自分.隊長に乱れがあるとき,その乱れを整理をせずに補うだけでは状況悪化もありうることをわが身で体験.しかし,所見はなおっても体調よくなるという自覚が得られないのは,いいのかなぁ,とも思いつつ.数値がよくなるが予後はべつによくしない多くの高脂血症治療を思い出している.どこか自覚のない場所でいいことがおきているのか?よくわからない.

037 左手の痺れ・嘔吐 57歳男性

[症例] 57歳男性
[主訴] 左手の痺れ
[初診] 1月
[現病歴] 1ヶ月前から左手がしびれ、動きが少し鈍い気がする(「ドーン」という感じ)。「親が外科で治療していたら内科の病気だったことがあり、一度きちんとみてほしくてきた」
[他症状] 『2年くらい毎朝、仕事前に吐いている。吐くとすっきりする。休日は吐かない』、前から手に汗をかきやすい(兄もそう)、1ヶ月前から左まぶたが浮腫む(自分では気にしていない)、右足底がびりびりすることがしばしばあり。
[生活歴] タバコ(-)、アルコール ビール350CC
[既往歴] 腰痛症(20歳ごろ、4ヶ月入院治療、手術はしていない)、健康診断受けていない
[家族歴] 親 ALS・脳梗塞、姉 心臓病で37歳で死亡
[アレルギー] 花粉症、ホコリに弱い
[その他] 食欲良好、尿 夜1回起きる(3時ごろ)、便 毎日(やわらかめ)、睡眠 心配事あると朝まで眠れないことがある、野菜は好きではない、甘いもの好き、

[現症] 体重・身長 中肉中背、一般状態良好
[検査] 胸部X線・頭部CT・採血・ABI 異常なし
[漢方所見]
(望診) 異常なし、抑うつなし
(舌診)舌質 青色、腫大、舌下静脈 うっ血(+)
(脈診) 実
(腹診) 充実

[判断と処方]
肉体的な異常見えず。精神的に過敏な印象。
抑肝散で経過をみることにする。

[経過]
●2週間
「毎日はいていたのが、この2週間で2回しか吐いていない!」
「左手と右足の冷感はそのまま」

手・顔に汗多い
やはり実証・多汗症

抑肝散継続

●1ヶ月半
「手足変わらず。あげるのは楽になった」
「便出さないと頭痛くなるが、出れば調子いい。夜はぐっすり眠れないときもある」

脈 腎虚
舌 静脈うっ血、やや腫大
腹 下腹部が虚脱

便秘と精神症状を目標に柴胡加竜骨牡蛎湯に変更

●2ヶ月半
「こないだの薬飲んだら食欲がなくなって便も下る感じした」半分にしてもだめで中止しちゃった。嘔吐もまたでてきた。前の薬がよかった気がする

抑肝散 再導入

●3ヶ月半
嘔吐はとまった。夜右足がつる。手足の汗は変わらない。
腸弱い。小さい時はよく下痢をしていた。

本治目的に小建中湯を加える

●5ヵ月
症状続いている

小建中湯 中止

整理のための 抑肝散 に加えて、消化器から元気を補う 補中益気湯 投与開始。芍薬甘草湯 こむら返り時内服

●6ヶ月
嘔吐ほとんどなくなった
手の汗減ってきた
こむら返りは 薬を飲むとぱっとひく

●8ヶ月
「だいぶよくなりました。2ヶ月間一度も嘔吐なし」 補中益気湯は全部飲むと便柔らかくなるので半分にしている

状態良好。
2週間追加処方し、徐々に減らしていただくことにした。

(感想)
『毎日仕事前に吐く』という特徴的な症状あるのにそれを主訴とせず受診されたところ,ついでに治った症例.そういった症状あってもあまり気にしないひとたちは,やっぱり市中にいるのだということを再認識.あと,嘔吐が抑肝散でひいていったのもそれまでの自分の経験ではなく,勉強になった