« 056 めまい 29歳女性 | メイン | 058 全身のしびれ感 47歳女性 »

057 ストレス 30歳男性

[症例] ストレス反応,30歳男性
[主訴] 不眠,肩こり
[初診] 7月
[現病歴] 1ヶ月前,暑くなり始めてから中途覚醒するようになった。合計6時間の睡眠中2回起きる。やや不調の精神状態と自覚している。いまひとつ気分がすっきりしない。同時期から肩こりが悪化傾向にある。漢方薬で治療できないかと考え受診した。
[生活歴] タバコ(-),酒(5回/週,ビール約1L),大学院生(ストレス反応について研究)
[既往歴] なし(暑気あたりの既往なし)
[家族歴] 父:高血圧・糖尿病,母:大動脈解離

[他症状] 食欲普通,中途覚醒(+),早朝覚醒(+),小便5〜6回/日,夜間尿(-),便1回/日・普通便, 疲れやすい,汗をかきやすい,寝汗(+),頭重(+),気分が憂鬱になる,いらいらする,水分をよく取る,足がむくむ,目が疲れる,目がかすむ,首・肩・背中・腰がこる,暑がり(熱証)

[現症] 体重60kg,身長170cm,血圧120/60mmHg,脈拍66/分,

[漢方所見]
(望診)普通
(舌診)淡紅,湿,やや大,薄白苔,歯痕あり,舌下静脈+-
(脈診)弦
(腹診)腹力4/5,心下部緊張,肋骨下緊張(+/++),腹直筋緊張(+/+),腹部動悸(++),
臍下圧痛(+/+), 鼠径部圧痛(+/+)

[判断と処方]
ストレスによる気うつ強い

[経過]
ストレスが強いと考え 四逆散 を処方した。むくみあるので頓用で 五苓散 を処方した。
10日後,「ストレスがすーっとおちた。よく眠れる。体の緊張取れた。肩こりへった。二日酔いなくなった」
その後も四逆散の定期内服がなくなるとストレスで体調不良になるため,内服を継続している。

(考察)
四逆散の原典は傷寒論,少陰病篇に「少陰病,その人或いは嗽し,或いは悸し,或いは小便不利し,或いは腹中痛み,或いは泄理下重の者は,四逆散之を主る」とある。裏熱のために正気が外に伸びることができなくなって,四肢の厥冷した状態を目標にするという意味である。ただし,この章は錯簡があるとされ,胸脇苦満と腹直筋の攣急という腹証によって用いることが良いとされる。やや実証に用いる柴胡剤である。柴胡・枳実・芍薬・甘草で構成される。甘草・芍薬の二味が合わさることで両脇を緩め,胸中心下を押し開く。ここに,胃腸を促進し腹中の滞った気を通じる枳実,半表半裏の熱を去る柴胡が加わっている。この方と小柴胡湯を合方し,人参と甘草を去り大黄を加えると大柴胡湯となる。芍薬甘草湯の加味方とも解釈できる。医中誌では,ストレス反応またはストレスを原因とした疾患に対する報告が多くある。本症例も,ストレスが根本的な原因と考えられたため四逆散を使用したところ効果を認めた。肩こりに対しては,ストレス除去に加え,芍薬甘草湯として筋緊張の軽減にも効果があったと考えられた。また,本例では水毒も体調不良を増悪させていると考えられたため五苓散頓用で利水をはかったことも,治療効果を強めたと考えられた。
参考:大塚敬節「臨床応用傷寒論解説」「漢方210処方生薬解説」「新古法薬嚢」

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://dream-hosp.net/cgi/mt/mt-tb.cgi/2848