かけだし総合医チュウの漢方カルテ
tag:dream-hosp.net,2013:/kensyuic/38
2013-12-14T14:13:37Z
総合内科志望の後期研修医の漢方治療の症例記録を、患者さんたちの同意をいただいて記録しています。
Movable Type 3.2-ja-2
引っ越しすることにしました
tag:dream-hosp.net,2013:/kensyuic//38.2850
2013-01-15T17:55:04Z
2013-12-14T14:13:37Z
サイト更新がなかなかできずにおりました。そろそろいじっていかないと…と思いたち、...
小池 宙
かけだし総合医ちうの漢方カルテ
http://kampochart.blog.fc2.com/]]>
058 全身のしびれ感 47歳女性
tag:dream-hosp.net,2012:/kensyuic//38.2841
2012-11-25T17:36:07Z
2012-11-25T17:38:24Z
[症例] 47歳女性 [主訴] 全身のしびれ感 [初診] 4月 [現病歴] 冬か...
小池 宙
[症例] 47歳女性
[主訴] 全身のしびれ感
[初診] 4月
[現病歴] 冬から手足のしびれ感・疼痛あり.整形外科,内科で精査するも異常なし.症状は月経前に強い.天気とは無関係.突然始まり自然と治る.めまいがでるときもある.
[生活歴] 喫煙(-),飲酒(-)
[既往歴] 自律神経失調症(38歳〜 スルピリド(ドグマチール)内服中)
[現症] 体重41kg・身長164cm
下肢 軽度の浮腫
[検査] 血液検査異常なし(甲状腺異常なし),頚部MRI異常なし
[漢方所見]
(舌診) 先端紅
(脈診) 細
(腹診) 肋骨角度狭小,臍上悸,臍右下圧痛あり
[判断と処方]
漢方的には動悸が目立つ
→桂枝加竜骨牡蛎湯 3包分3
むくみあり
→五苓散 3包分3
[経過]
●2週間後
「桂枝加竜骨牡蛎湯は効いていると思います.一時やめてみたら症状悪化,再開したら改善」
→継続
●7週間後
「頭はすっきりした感じ.動悸は毎日じゃなくなった」
→桂枝加竜骨牡蛎湯のみに変更
●3ヶ月目
「数週間前,飛行機に乗ったら緊急着陸してくれと叫びたくなるほど動悸がした.」
「腹部動悸は4月は常にあった,5月は小刻み,6月からは触ってもわからなくなった」
腹部動悸軽度に。
脈 弦,舌 先端紅
漢方的には熱が心にこもっている印象.
→清心蓮子飲 に変更
●4ヶ月目
「とてもよくなってきている.でも,1週間前内服中止してみたら,受診日朝から手足と顔にビリビリという感じが出現.清心蓮子飲をのんで,お腹の調子がいい.いつも夏になると下痢をしていたのが今年はでない.」「桂枝加竜骨牡蛎湯は元気になる薬だった」
舌 黄苔,先端紅
→朝昼 桂枝加竜骨牡蛎湯,夕 清心蓮子飲 に
(補足)
桂枝加竜骨牡蛎湯は、西暦200年頃にかかれた傷寒論・金匱要略に記載された方剤。もともとは、「小腹弦急し、陰頭冷え、目眩し、髪落ち、失精、夢交する証」つまり、性的な衰弱に用いた薬である。現代では、気逆といって気の流れが下に向かわず上にのぼるようになる状態によく使用する。内容は、風邪薬の基本薬であり気の流れをととのえる桂枝湯に、気をしずめ気分を落ちるける牡蛎(カキの貝殻)と竜骨(古代の哺乳類の化石)を加えたもの。上腹部の動悸が目立つひとに効きやすい。
五苓散も同じく傷寒論に記載された薬。水を調整する薬が4種類と、桂枝(シナモン)で構成された方剤。科学的には水チャネルであるアクアポリンに働くことが示されている。西洋薬では水分が多すぎるときは、利尿剤で血管内の水を除くことを通して、血管の外側から水を吸い出す、という作業をする。いわゆる、「利尿薬」である。けれど、それだけでは血管の外の水、つまりむくみ、はなかなか取れないことがある。五苓散を代表とする漢方薬の「利水剤」は、全身の細胞に働いてむくみをとる。利尿薬のように頻回にトイレにいく必要もなく体調も整う。
清心蓮子飲は、1107年頃に中国で発行された和剤局方に記載された方剤。もともと胃腸が虚弱な人が抑うつと排尿障害を合併しているときに使用する。イライラしていて舌の先端が赤くなっているひとに効きやすい。
漢方複数種飲むと、効果が不明瞭になるため本来は避けるべき。本症例は、一剤でなおせないかと迷いつつも、結局複数の薬を重ねてしまった。全身を同時に治せる1剤がなかったのか検討中.
057 ストレス 30歳男性
tag:dream-hosp.net,2012:/kensyuic//38.2838
2012-01-18T06:20:47Z
2012-01-18T06:21:24Z
[症例] ストレス反応,30歳男性 [主訴] 不眠,肩こり [初診] 7月 [現...
小池 宙
[症例] ストレス反応,30歳男性
[主訴] 不眠,肩こり
[初診] 7月
[現病歴] 1ヶ月前,暑くなり始めてから中途覚醒するようになった。合計6時間の睡眠中2回起きる。やや不調の精神状態と自覚している。いまひとつ気分がすっきりしない。同時期から肩こりが悪化傾向にある。漢方薬で治療できないかと考え受診した。
[生活歴] タバコ(-),酒(5回/週,ビール約1L),大学院生(ストレス反応について研究)
[既往歴] なし(暑気あたりの既往なし)
[家族歴] 父:高血圧・糖尿病,母:大動脈解離
[他症状] 食欲普通,中途覚醒(+),早朝覚醒(+),小便5〜6回/日,夜間尿(-),便1回/日・普通便, 疲れやすい,汗をかきやすい,寝汗(+),頭重(+),気分が憂鬱になる,いらいらする,水分をよく取る,足がむくむ,目が疲れる,目がかすむ,首・肩・背中・腰がこる,暑がり(熱証)
[現症] 体重60kg,身長170cm,血圧120/60mmHg,脈拍66/分,
[漢方所見]
(望診)普通
(舌診)淡紅,湿,やや大,薄白苔,歯痕あり,舌下静脈+-
(脈診)弦
(腹診)腹力4/5,心下部緊張,肋骨下緊張(+/++),腹直筋緊張(+/+),腹部動悸(++),
臍下圧痛(+/+), 鼠径部圧痛(+/+)
[判断と処方]
ストレスによる気うつ強い
[経過]
ストレスが強いと考え 四逆散 を処方した。むくみあるので頓用で 五苓散 を処方した。
10日後,「ストレスがすーっとおちた。よく眠れる。体の緊張取れた。肩こりへった。二日酔いなくなった」
その後も四逆散の定期内服がなくなるとストレスで体調不良になるため,内服を継続している。
(考察)
四逆散の原典は傷寒論,少陰病篇に「少陰病,その人或いは嗽し,或いは悸し,或いは小便不利し,或いは腹中痛み,或いは泄理下重の者は,四逆散之を主る」とある。裏熱のために正気が外に伸びることができなくなって,四肢の厥冷した状態を目標にするという意味である。ただし,この章は錯簡があるとされ,胸脇苦満と腹直筋の攣急という腹証によって用いることが良いとされる。やや実証に用いる柴胡剤である。柴胡・枳実・芍薬・甘草で構成される。甘草・芍薬の二味が合わさることで両脇を緩め,胸中心下を押し開く。ここに,胃腸を促進し腹中の滞った気を通じる枳実,半表半裏の熱を去る柴胡が加わっている。この方と小柴胡湯を合方し,人参と甘草を去り大黄を加えると大柴胡湯となる。芍薬甘草湯の加味方とも解釈できる。医中誌では,ストレス反応またはストレスを原因とした疾患に対する報告が多くある。本症例も,ストレスが根本的な原因と考えられたため四逆散を使用したところ効果を認めた。肩こりに対しては,ストレス除去に加え,芍薬甘草湯として筋緊張の軽減にも効果があったと考えられた。また,本例では水毒も体調不良を増悪させていると考えられたため五苓散頓用で利水をはかったことも,治療効果を強めたと考えられた。
参考:大塚敬節「臨床応用傷寒論解説」「漢方210処方生薬解説」「新古法薬嚢」
056 めまい 29歳女性
tag:dream-hosp.net,2011:/kensyuic//38.2837
2011-11-11T07:09:13Z
2011-11-11T07:15:04Z
[症例] 29歳女性 [主訴] めまい [東洋医学治療開始日] 6月 [現...
小池 宙
[症例] 29歳女性
[主訴] めまい
[東洋医学治療開始日] 6月
[現病歴] 月に1〜2回,天気の悪い日に体辛くて起き上がれなくなる症状があった。転職,異動で症状悪化した。出勤できなくなるため,3ヶ月前に婦人科を受診し,桂枝茯苓丸加薏苡仁,半夏厚朴湯,当帰芍薬散,抑肝散加陳皮半夏を処方されためした。桂枝茯苓丸加薏苡仁はにきびによく効いた。半夏厚朴湯で気分は良くなった。当帰芍薬散では腹痛出現した。受診時は半夏厚朴湯を飲んでいた。しかし,起き上がれなくなる症状継続しており,異なる治療を希望して,当院漢方外来受診した。
[他症状] 顎にニキビあり
月経周期30日,出血期間7日,出血量多〜普通
生理2日前から気分が落ち込みやすくなっていらいらする,眠くなる,便秘傾向でてくる,月経痛はたまにすごく痛いが普段はそれほどでもない。社会人になって悪化した。生理始まれば楽になる
排便1日1回・硬
お腹が弱くてすぐ消化器症状出る。気持ち悪くなって食欲なくなる。甘いものは食べたくなる。飲み会のあとお腹がちゃぷちゃぷする
[既往歴] なし
[内服] 半夏厚朴湯
[漢方所見]
体格:普通, 顔色:普通, 皮膚:湿潤
(舌診) 色:淡紅, 湿潤:湿潤, 大きさ:胖大, 苔:白薄, 歯痕:(+),舌下静脈怒張:(+),
(脈診) やや虚,やや遅
(腹診) 腹力:1/5,所見:振水音(+),上腹部・臍傍動悸(+),冷感(+),発汗(+)
[判断と処方]
生来の消化器の弱さが目立った。水毒で悪化していた。
半夏白朮天麻湯の条文(後述)に適合すると考え,クラシエ半夏白朮天麻湯7.5g処方した。
水毒の発作を抑えるために,ツムラ五苓散を頓服とした。
[経過]
その後,半夏厚朴湯内服を自己中断していた。
4週後の最新で,仕事を休まなくても良くなった,とのことだった。月経前も出勤できる。頓服の五苓散もたまに使用すると,尿がよく出て,雨の日に気持ち悪くなったり眠くなったりすることがなくなった。
その後も,軽度の起立性低血圧はしばしば起こるが,胃腸の調子は良くなり全身状態改善傾向にある。外来受診を継続している。
[考察]
半夏白朮天麻湯は胃腸が虚してめまいがあるものに使用する。原典は脾胃論で,「眼黒く頭旋り,悪心煩悶。気短促,上喘し力無くして言うを欲せず。心神顛倒し,兀兀(ごつごつ)やまず。目あえて開かず。風雲の中にあるがごとく,頭苦痛して裂くがごとく,身重くして山のごとし。四肢厥冷して安臥する事を得ず」とある。半夏,白朮・蒼朮,陳皮,茯苓,人参,生姜・乾姜と六君子湯の要素に,天麻(鎮痙鎮痛),麦芽(健胃・熱を除き気を増し中を調える),神麹(健胃・消化促進),黄耆(体表を補い堅きを緩め寒を除く),沢瀉(利尿・熱を去り燥きを潤す),黄柏(健胃・血熱を除き下痢を止め腹痛を治す)を加えたもの。平素より胃腸が虚弱で,胃内停水があり,外感や精神的ショックや不摂生などで胃内の水毒が動揺して上逆し,頭痛,めまい,嘔吐を発するものに用いる。本症例はこの原典の記載に適合したため使用したところ効果を認めた。また,併用していた五苓散も利水作用あり,本患者ではそれらの影響も存在したと考えられた。
(参考)「活用自在の処方解説」「漢方診療医典第6版」「新古方藥嚢」
055 むずむず脚症候群 84歳男性
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2831
2010-12-22T14:19:21Z
2011-06-27T08:57:49Z
[症例] 84歳男性 [主訴] むずむず脚症候群 [東洋医学治療開始日] 10月...
小池 宙
[症例] 84歳男性
[主訴] むずむず脚症候群
[東洋医学治療開始日] 10月
[現病歴] 不眠症、胃潰瘍を加療されていた方。精神科では神経症圏の可能性も検討されていた。不眠症加療目的の精神科受診時に、TVでみたドーパミン作動薬が自分にぴったりだと処方希望あり。
[他症状] 寝るとき、足が熱をもつのが気になる。それが不眠の原因になっているわけではないとおもう。
[既往歴] 慢性腎不全
[内服] プロトンポンプ阻害薬、ミヤリ散、抗精神病薬(ペルフェナジン)、脂質代謝改)薬(ポリエンホスファチジルコリン)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬(4種類)、
[現症] 身長高い、体格がっちりとしている
[検査] 腎不全(BUN 54、Cre 2.36、Hb 9.3)
[漢方所見]
(望診) しっかりとしたスーツ姿
[判断と処方]
慢性腎不全あり、ドーパミン作動薬はリスクが高かった。
東洋医学的に治療することとし、むずむず脚症候群に対し八味地黄丸内服開始した。
[経過]
2週間後、「足がほてるのはよくなりました。あれは効きますね」
「今困ることは特にありません。若干寝つきがわるいかなと思うが生活習慣で調整する」
(感想)
慢性腎不全とむずむず脚症候群を同時にもっていたため八味地黄丸を使用したところ著効した症例。精神科ではさまざまな症状をいつも訴えて神経症圏も疑われていたがすべてすっきりと落ち着いたのが印象的だった。
054 腹痛 63歳男性
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2830
2010-12-22T13:27:04Z
2010-12-22T13:56:16Z
[症例] 63歳 男性 [主訴] 腹痛 [初診] 9月(漢方治療は10月) [現...
小池 宙
[症例] 63歳 男性
[主訴] 腹痛
[初診] 9月(漢方治療は10月)
[現病歴] 以前から食後に右上腹部が重い感じがあった。初診2日前から胃の右側の痛みに変わり、一日中寝ていた。その後も疼痛続いたため受診した。
[痛みの性質] きゅーっと筋肉がしまる感じ、食後に悪化する
[他症状] 黒色便(+)
[生活歴] 喫煙(-)
[既往歴] 交通事故で頚椎捻挫
[現症] 頭頚部異常なし(眼球黄染なし)、腹部やや満、圧痛(-)、胆嚢ふれず
[検査] 血液検査:異常なし(貧血なし)、腹部超音波:異常なし、上部消化管内視鏡:異常なし(潰瘍、瘢痕なし)
→肝胆疾患は否定的で、胃十二指腸潰瘍もなし、制酸薬での経過観察で腹痛は軽減したが、腹部の違和感残存した。東洋医学で加療をすることとした。
[他症状] ストレス多い。首から上に症状が出るからよく葛根湯を飲む
[漢方所見]
(聞診)か細い声
(舌診)黄苔、舌下静脈正常
(脈診) 右>左
[判断と処方]
器質的な異常からの疼痛ではなく、機能性の異常の可能性が高い
気虚、気滞、気鬱あり
香蘇散7.5g分3開始
[経過]
3週間後、「のみはじめて2〜3日で痛みなおりました。首から上はやっぱり重いですね」
効果があった。相談の上で、症状がきえたため内服中止とした
(感想)
長期間続く腹痛あり、香蘇散を使用したところ3日で改善した症例。腹痛という症状からの処方の選択ではなく、東洋医学的病態を検討したことがよかったと感じた。
053 右上腹部痛 79歳女性
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2829
2010-12-22T13:07:35Z
2010-12-22T13:26:58Z
[症例] 79歳女性 [主訴] 右上腹部痛 [初診] 9月 [現病歴] もともと...
小池 宙
[症例] 79歳女性
[主訴] 右上腹部痛
[初診] 9月
[現病歴] もともと便秘がち。兎糞状の便。今まで右上腹部痛経験したことはなかった。1日前、14時から約2時間下腹部痛があった。トイレに3〜4回いったら兎糞状の便がでて痛み消えた。朝9時頃、右上腹部が痛くて目が覚めた。朝、2回排便があったが痛み改善せず。寝てもおきても痛かった。近医受診し当院に内科に紹介された。
[痛みの性質] 波なし、息をするときに鈍痛あり、刺すような痛みではなく今まで経験したことのない種類の痛み。吸気、歩行で増悪する。放散痛なし。
[既往歴] 虫垂炎を手術で治療、癒着あり再手術、甲状腺を手術したため検査を年1回している。
[内服] 常用薬なし、下剤使用していない
[家族歴] 特記すべきことなし
[現症] 頭頚部異常なし、腹部軟、腸音正常、ガス(++)、便塊を腹壁越しに触れる、右上腹部と左下腹部最強も全体的に圧痛あり、吸気で右上腹部の疼痛悪化しない
[検査] 腹部超音波:胆嚢肝臓含め異常所見なし、胸部X線:異常なし、腹部X線:ガス多い(イレウス認めず)、血液: ヘモグロビン11.8と貧血傾向、他明らかな異常なし
[処置] 便秘疑い浣腸施行も液が出るのみ、便塊肛門からふれず、腹痛持続
→東洋医学で対処することにした
[漢方所見]
(望診) 身軽に動いている、やせている
[判断と処方]
消化管の機能低下、蠕動運動不十分なことから疼痛が生じている可能性あり。
ミヤリ散3g分3、麻子仁丸2.5g分1、大建中湯15g分3開始した。
[経過]
2週間後、「おなかはったり痛かったりすることはまだあるが前ほどではない、通じは毎日はないけれど一回の量は少なくなり回数ふえた。右上腹部はもう痛くない」
「冷え性なんです。足や手はつめたくて・・・」「前からですが、やせて・・・」
→処方継続
2ヵ月後「よくなりました。通じの時間は不規則だけれど、毎日でます」
4ヵ月後「前みたいにころころした便はなくなった。いつもは手足が冷たくて電気毛布をあつくしていたけれど、今はおかげさまであったかいです」
→ 改善傾向みとめるので処方継続
(感想)
腸の運動が低下しているときの大建中湯の効果を実感した。冷え性があると効きやすく、また冷え性も改善する。
051 78歳男性 喉のいがいが・咳・痰
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2828
2010-12-22T12:39:22Z
2010-12-22T13:06:04Z
[症例] 78歳男性 [主訴] 喉のいがいが・咳・痰 [初診] 9月 [現病歴]...
小池 宙
[症例] 78歳男性
[主訴] 喉のいがいが・咳・痰
[初診] 9月
[現病歴] 約10年前からのどの違和感、咳、痰あり。医者にかからず様子をみていたが最近症状が悪化傾向あった。一度医者にみてもらおうと受診した。
[生活歴] 酒 焼酎0.5合、タバコ(-)
[既往歴] 脊柱管狭窄症(1年前手術)
健康診断は毎年受けているが異常は指摘されていない
[内服] 薬草を煎じてのんでいる(ゲンノショウコ、ドクダミ、ハトムギ)
[家族歴] 6人兄弟、全員健康
[性格] のんき
[他症状] ニクを食べると左足が2〜3日痛くなる、ホルモンは特にだめ
[ROS] ストレスは感じない、唾液は多量に出るが困らない
[現症] 明らかな異常所見なし
[漢方所見]
(望診) 身長高い、脂肪少なく筋肉質、表情明るい
(舌診)黄色苔少量、厚さは薄い
(脈診)やや弱
[判断と処方] 判断少ないが、10年前からの器質的な異常があるとは考えにくい。半夏厚朴湯6g分3で様子見とした。
[経過]
2週間後、「だいぶよくなった! 咳もだいぶよくなったよ。夜中も咳が出ない。家内もえらい良くなったといっている。薬は飲みいですよ」
2ヵ月後、3ヶ月とさらに症状改善も、軽度も残存しているため内服継続としている。
(感想)
咽喉頭異常感症はストレスで出現すると感じていたが、明らかなストレスなく、またストレスを感じやすい気質でもなかった症例。ストレスにこだわる必要はないと学んだ。
050 頭痛 43歳男性
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2826
2010-11-17T13:22:05Z
2010-11-17T13:26:19Z
[症例] 43歳男性 [主訴] 頭痛 [初診] 10月 [現病歴] 「後頭部がじ...
小池 宙
[症例] 43歳男性
[主訴] 頭痛
[初診] 10月
[現病歴] 「後頭部がじわーんするような頭痛」が春からある。夏からは頭痛に
加え動揺性めまいも出現するようになった。脳外科受診も脳に異常はなく、緊張
性頭痛の診断で緊張をほぐす薬を処方された。頭痛は突然来る。受診2日前、動
悸ありすわっているのがやっとの状況だった。1日前の夕方も、突然の耳鳴りに
続いてめまいが出現した。歩くことができないため家まで送ってもらった。
[自己評価] ストレス強い。自分なりに対処しているが整理できていない
[生活歴] 睡眠 23時〜5時半、食欲 普通、飲み物 会社では缶コーヒー・家
では焼酎2杯、大便 毎日ある・有形、小便 夜間起きない
[既往歴] なし
[家族歴] なし
[現症] 中肉中背、多弁
[漢方所見]
(舌診)歯痕(+)、腫大(-)
(脈診)浮・細、左関微弱、左寸弦
背中、肝ユ(肩甲骨下)が張っている
[判断と処方]
自律神経の乱れからの諸症状。
東洋医学的には肝の乱れが目立つ。
抑肝散 7,5g分3処方
[経過]
「薬を2週間のんで症状はほぼおちつきました」
1か月分追加処方し、自己調整いただき、症状継続すれば再診いただくこととした。
(感想)
抑肝散はもともと子供の癇の虫の薬だが、不穏・興奮状態の高齢者に現在はひろく使われている。特に、軽度な段階で抑肝散を使うととてもおちつき、介護が楽になっていく。そのように高齢者に使う薬として認識され一般内科で使用されているが、このストレス社会な現代はストレスからの自律神経失調症で効くことがよくある。
また、この症例のように、背中のツボをさすって探すことが大きなヒントになることがある。問診しながら背中をさすりそのひとの状態を大雑把に把握することは、鍼灸師はよく行っている手法。しばしば便利。
049 腹痛、食欲不振 11歳男性
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2821
2010-06-28T01:21:04Z
2010-11-17T13:22:00Z
[症例] 11歳男性 [主訴] 腹痛、食欲不振 [初診] 5月 [現病歴] 5...
小池 宙
[症例] 11歳男性
[主訴] 腹痛、食欲不振
[初診] 5月
[現病歴] 5月末、腹痛・嘔気・食欲不振が急に出現、 小児科受診するも明らかな異常所見なくプロバイオティクス・ナウゼリンで様子見るも改善せず。入院し精査加療を行うも異常所見なし。心理的影響もなかった。退院後も腹痛・食欲不振継続するため小児科外来受診した。
[他症状] なし(普通便)
[生活歴] 野球チームでピッチャーをしている
[既往歴] アトピー性皮膚炎(小学生までに治癒)、伝染性膿痂疹(1歳)、胃腸炎(9歳 入院加療)
[現症] 体重27.3 kg, 身長 141 cm
腹部 腸鳴 やや亢進、
[検査] 血液検査・腹部X線・腹部エコー・上部消化管カメラ 異常なし
[漢方所見]
(望診) 元気、やや顔色不良、
(腹診) 上腹部冷感軽度・圧痛あり、腹直筋目立つ、大動脈拍動軽度触知
[判断と処方]
消化管の動きが活性化しすぎて腹痛となっているのか? 消化器のけいれんをおさえればよさそう。
桂枝加芍薬湯 5g分2処方
[経過]
●2日後
おなかまだ痛い。何も変わらない。「まずい」
粉末飴加えた小建中湯 10g分2に変更
●1週間後
「あの薬のみはじめたらたべれるようになりました」
腹痛消失。
母と相談し、しばらくつづけることにした。
(感想)
消化器の痙攣をおさえるだけなら桂枝加芍薬湯のほうがいいかと感じたのだが、小建中湯のほうがよく効いた印象。桂枝加芍薬湯の効果がちょうどそのころ出てきたのかもしれないが。
いずれにせよ、小児は小建中湯のほうがやはりよさそう
048 胸痛 38歳男性
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2819
2010-05-30T02:33:13Z
2010-05-30T02:34:26Z
[症例] 38歳男性 [主訴] 3年前から時々胸が痛い [初診] 3月 [現病...
小池 宙
[症例] 38歳男性
[主訴] 3年前から時々胸が痛い
[初診] 3月
[現病歴] 3年前心筋梗塞の診断で治療歴あり。その後主治医との関係不良で治
療中断していた。またそのころから、運転中や仕事中、緊張しているときにギューっ
とうずくまりたくなるような胸痛あり。運動負荷で痛くなることはない。心筋梗
塞がほんとうにあったのかどうかよくわからないので調べてほしい、と受診。
[他症状] むくみなし、夜動悸が気になることあり
[生活歴] タバコ20本/日、酒(-)
[既往歴] うつ病(薬物治療中)、片頭痛、直腸ポリープ摘出時に穿孔したことあり
[家族歴] 心筋梗塞複数
[現症] やや肥満
頭頚部正常、胸部雑音なし、腹部 臍部に手術痕、四肢 右足背動脈減弱、
[検査] 高脂血症、胸部X線 心拡大(-)・胸水(-)、心電図 異常なし、ホルター
心電図 異常なし、心エコー 壁運動以上あり(陳旧性心筋梗塞)、心臓カテー
テル 動脈狭窄あり
[漢方所見]
(望診) ストレス多そう
[判断と処方]
心筋梗塞あり。今後の抗血小板療法必要。
しかし、身体的ストレスではなく精神的ストレスでおこる胸痛は心筋梗塞由来と
は考えにくい。
抑うつ、胸痛 から 香蘇散 証と考え、スタチン、アスピリン処方の上で、香
蘇散処方。
[経過]
●1ヵ月後
「胸痛は治まった気がする」
継続。
●2ヵ月後
「ドキドキ、なくなりました。薬って信じてなかったんですが、効くもんなんで
すかねぇ・・・」
香蘇散 終了。再発時は再開することに。
(感想)
抑うつ傾向ある方の 胸痛・動悸に香蘇散はよく効く。抗不整脈薬を長期内服し
ている方は多いが、香蘇散に切り替えれば皆さん楽になると思うのだが・・・
047 下半身脱力 79歳女性
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2818
2010-05-15T13:39:55Z
2010-05-15T13:41:02Z
[症例] 79歳女性 [主訴] 歩けなくなった [初診] 7月 [現病歴] 定年...
小池 宙
[症例] 79歳女性
[主訴] 歩けなくなった
[初診] 7月
[現病歴] 定年になってから体がおかしくなった。食べるものがまずくなった。
今年に入ってから足が前に出なくなった。
[他症状] 頻尿(夜4〜5回おきる)、歯は下5本残っている、足冷える
[既往歴] 高血圧、心房細動、気管支喘息、左顔面神経麻痺、白内障、緑内障、
毎年の人間ドッグでは異常指摘されず
[内服薬] ワーファリン 4mg、アムロジン 5mg、フルタイド100 1日2回、モーラ
ステープ
[現症] 左顔面痙攣軽度(+)、胸部 不整脈あり、雑音なし、四肢・左ひざク
リック(+)、むくみなし
[検査] 血液異常なし
[漢方所見]
(望診)抑うつ的
(舌診)苔 黄・粗、舌下静脈(+)
(脈診)右 浮・緊、左 沈・弱
(腹診) 腹力とても弱い、満、臍左下部に違和感あり
[判断と処方]
第一印象が抑うつ傾向。全身倦怠感、食欲不振、気管支喘息あるため、消化器・
肺を治療し気を補う補中益気湯5.0g開始。
[経過]
●10日目
「体がしっかりしてきた。漢方薬利く気がする。前は2軒となりまで歩くのがやっ
とだったけれど少し歩けるようになった」
「溶かして飲むとまずい。粉で飲んでいる」
補中益気湯継続
●1ヵ月
「しんので歩けない。体の奥がしんのいかんじ」
八味地黄丸4.0g分2をメインに変更。胃腸が弱く副作用でやすいと思われたので、
また喘息もあるので補中益気湯 2.5g分1で継続。
●1ヵ月半
「えらいいいよ。すっとたったり歩いたりできるようになった」「近すぎたトイ
レが良くなってきた。眠れる時間も増えた」
●5ヶ月目
「1km離れたところもがんがん歩ける」「時々むくむ」
八味地黄丸 を 牛車腎気丸 に強める
●7ヶ月目
「足のむくみ、えらいいいような気がする。まだしんの」「ハリ、週1回いって
いるよ。いくととてもよくなる」
●9ヶ月目
「しんのさ、まだある。何かやるとどきどきする。薬やめるってできるかな?」
治療できる範囲は治療できたか。薬やめても症状でないか、1ヶ月後に様子見
(感想)
高齢者の下半身脱力。腎虚とは思ったが、抑うつ傾向と消化器の弱さが目立ち、
消化器と肺の治療を先行させた。結局補腎で下半身の脱力軽減した。しかし倦怠
感は継続。高齢であり仕方のないことだったのか、他の薬剤を使えばなおったの
か。補中益気湯 が当初より口に合わなかったのは気になっていた。検討してお
く。
046 下半身に元気がない 73歳男性
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2817
2010-04-28T00:41:37Z
2010-04-28T00:46:14Z
[症例] 73歳男性 [主訴] 下半身脱力 [初診] 12月 [現病歴] 4ヶ月...
小池 宙
[症例] 73歳男性
[主訴] 下半身脱力
[初診] 12月
[現病歴] 4ヶ月前から腰痛・右足痛あり、近医整形受診。X線も大きな異常なく、ブロックを5回ほどした。1週間持つが良くはならなかった。心配でMRIとりたくて受診。
[他症状] 下半身に力が入らず、散歩時もガードレールを伝い歩き必要。すっと立てない。しゃがんで仕事できず箱を椅子に使わざるを得なかった。つま先がじりじりしびれている。冷え(-)。
[生活歴] タバコ 20本/日
[既往歴] 帯状疱疹、胃潰瘍
[家族歴] 特記すべきこと無し
[現症] 肥満(++)
[検査] 血圧 120/72、HbA1c 8.5%、ABI 異常なし、心電図 異常なし、胸部X線 心拡大なし、腰部MRI すべり症(+)
[漢方所見]
(望診) 体格良く元気そう
[判断と処方]
[経過]
糖尿病あり。しかし、下半身の脱力はそれだけでは説明できない。年齢の影響考え、牛車腎気丸証と判断。
生活習慣の改善をまず調整。
同時に、牛車腎気丸内服開始。
・1ヶ月後
「あの薬のんだら少し足に力が入るようになった。両足の指先のぴりぴりがえらいよくなった気がする」
・2ヶ月後
「だいぶ歩けるようになった。散歩でガードレール必要なくなった。簡単に立てるようになった。しゃがんで仕事できる。」
栄養調整努力する意志がとても強い方なので、血糖も徐々に調整中。
(感想)
やはり、西洋医学だけでも、東洋医学だけでも患者さんをとらえきること、治療しきることはできない。
045 めまい・胃が重い 76歳女性
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2816
2010-04-28T00:39:42Z
2010-04-28T01:00:00Z
[症例] 76歳女性 [主訴] めまい・胃が重い [初診] 5月 [現病歴] 以...
小池 宙
[症例] 76歳女性
[主訴] めまい・胃が重い
[初診] 5月
[現病歴] 以前よりしばしばめまい、嘔気、動機発症し受診していた。農作業を頑張ってひどく疲れていた。立ち上がるとふらふらする。
[他症状] 2年前から「胃から下らない」時がある。
[既往歴] 高血圧(内服加療中)、GERD
[現症] 神経症状なし
瞼 隈あり
[漢方所見]
(望診) 神経質そう
(舌診) 裂紋 少、淡、苔 少
(脈診) 右<<左、右は細く中間位、左は浮いている
[判断と処方]
自律神経・胃腸運動弱そう。
胃腸とめまいを目標に、半夏白朮天麻湯 処方する。
[経過]
●1ヵ月目
「だいぶよくなった。5日かった。あの薬きいた」
明るい表情で受診。継続処方は不要と考え、2ヶ月分処方しフォロー中止とした。
●3ヶ月目
「胃腸、つかえるような感じが薬をのんでいるとなくなった。続けたい」と受診。
内服、継続することにする。
●6ヶ月目
「あの薬のんでいると安心していられる」
希望にて続ける
●8ヶ月目
「めまいの方はすっかりよくなった。けれど胃が重苦しい。食べて30分くらいは休まないと動けない。農作業には1〜2時間休憩が必要。立ち仕事は座り仕事が出来ない」
「胃がこうなったのは数年前からだけれど、10ヶ月くらい前から悪化」
胃腸機能を整えることに集中することに決めた。六君子湯に変更。
●10ヶ月目
「よくなった!だいぶ楽になった。あの薬のみやすい」
「小さい子がミルク飲んだ後、げっぷが出るような感じがずっとあったのが、なおった」
しばらく継続することにする。
(感想)
胃腸の弱いひとのめまいへの半夏白朮天麻湯の効果を実感。
六君子湯は体が弱い状態を立て直すのにとても便利。補中益気湯より副作用少なく飲みやすい印象。
044 全身が痛い・動けない 85歳女性
tag:dream-hosp.net,2010:/kensyuic//38.2810
2010-02-04T14:24:51Z
2010-02-04T15:26:56Z
[症例] 85歳女性 [主訴] 肩と腰と足が痛い・動けない [初診] 4月 [現...
小池 宙
[症例] 85歳女性
[主訴] 肩と腰と足が痛い・動けない
[初診] 4月
[現病歴] 右化膿性関節炎後ADL低下したため、2年半前在宅診療導入された。当初より両肩・足の疼痛認めたためしばしばトリガーポイントブロック施行されるも疼痛改善は3日間のみで状態横ばいで経過をみていた。半年前、急性腰痛症発症、その後動けなくなり寝たきりとなっていた。 筆者初診日、朝から1年前に骨折した右第5指が痛いとの訴えあった。
[既往歴] 左腸骨深部静脈血栓症、高血圧、高脂血症、糖尿病、偽痛風、右化膿性関節炎(関節注射が原因、手術で治癒)、うつ病、膀胱癌(TUR-BT手術後・再発に対して放射線治療後)
[症状] 両肩・左下腿・腰痛あり、特に左肩が一番痛い、寒いと痛みやすい、PIP痛みやすい、朝こわばる、DIP痛くならない、腰から下の冷え性、若いころ生理痛に悩んだほう、
[現症] 肥満体型、バイタル異常なし
収縮期雑音あり、
PIP 軽度の変形が多数指にあり、右5指PIPに炎症所見あり
[漢方所見]
(望診) 中心性肥満あり
(舌診) 舌大きめ、苔 粗・黄色傾向、舌下静脈 怒張
(脈診) 弱
(腹診) 明らかな異常所見なし、下腹部虚脱なし
[判断と処方]
血流障害ある。筋力低下は血虚を示している可能性あるか。
左腕→左肩→左足→左腰→左足 と小腸・心包経、胆・肝経 について針治療施行。
東洋医学的血流障害が疼痛の原因になっている可能性考え、疎経活血湯(53)処方。
[経過]
針治療により疼痛軽減。右手第5指の疼痛は治療後すぐに消失。
疎経活血湯は飲みにくい薬であったが1ヶ月内服。しかし疼痛軽快せず皮疹も出現したため中止。以後鍼治療を1〜2回/月の筆者の訪問時に施行。局所麻酔によるトリガーポイントブロックは3日しか効かないが、針治療の効果は10日くらいもつとのこと。徐々に疼痛軽減し、10月〜12月の施設への短期入所後はADL上昇し歩行可能になり、また治療の頻度も1回/月に下げた。
(感想)
ペインは針治療が速い。
振り返ると、うつ病との診断名が前医によりつけられていたが、神経症のほうが近い印象。漢方薬は半夏厚朴湯が効いたかもしれない。