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037 左手の痺れ・嘔吐 57歳男性

[症例] 57歳男性
[主訴] 左手の痺れ
[初診] 1月
[現病歴] 1ヶ月前から左手がしびれ、動きが少し鈍い気がする(「ドーン」という感じ)。「親が外科で治療していたら内科の病気だったことがあり、一度きちんとみてほしくてきた」
[他症状] 『2年くらい毎朝、仕事前に吐いている。吐くとすっきりする。休日は吐かない』、前から手に汗をかきやすい(兄もそう)、1ヶ月前から左まぶたが浮腫む(自分では気にしていない)、右足底がびりびりすることがしばしばあり。
[生活歴] タバコ(-)、アルコール ビール350CC
[既往歴] 腰痛症(20歳ごろ、4ヶ月入院治療、手術はしていない)、健康診断受けていない
[家族歴] 親 ALS・脳梗塞、姉 心臓病で37歳で死亡
[アレルギー] 花粉症、ホコリに弱い
[その他] 食欲良好、尿 夜1回起きる(3時ごろ)、便 毎日(やわらかめ)、睡眠 心配事あると朝まで眠れないことがある、野菜は好きではない、甘いもの好き、

[現症] 体重・身長 中肉中背、一般状態良好
[検査] 胸部X線・頭部CT・採血・ABI 異常なし
[漢方所見]
(望診) 異常なし、抑うつなし
(舌診)舌質 青色、腫大、舌下静脈 うっ血(+)
(脈診) 実
(腹診) 充実

[判断と処方]
肉体的な異常見えず。精神的に過敏な印象。
抑肝散で経過をみることにする。

[経過]
●2週間
「毎日はいていたのが、この2週間で2回しか吐いていない!」
「左手と右足の冷感はそのまま」

手・顔に汗多い
やはり実証・多汗症

抑肝散継続

●1ヶ月半
「手足変わらず。あげるのは楽になった」
「便出さないと頭痛くなるが、出れば調子いい。夜はぐっすり眠れないときもある」

脈 腎虚
舌 静脈うっ血、やや腫大
腹 下腹部が虚脱

便秘と精神症状を目標に柴胡加竜骨牡蛎湯に変更

●2ヶ月半
「こないだの薬飲んだら食欲がなくなって便も下る感じした」半分にしてもだめで中止しちゃった。嘔吐もまたでてきた。前の薬がよかった気がする

抑肝散 再導入

●3ヶ月半
嘔吐はとまった。夜右足がつる。手足の汗は変わらない。
腸弱い。小さい時はよく下痢をしていた。

本治目的に小建中湯を加える

●5ヵ月
症状続いている

小建中湯 中止

整理のための 抑肝散 に加えて、消化器から元気を補う 補中益気湯 投与開始。芍薬甘草湯 こむら返り時内服

●6ヶ月
嘔吐ほとんどなくなった
手の汗減ってきた
こむら返りは 薬を飲むとぱっとひく

●8ヶ月
「だいぶよくなりました。2ヶ月間一度も嘔吐なし」 補中益気湯は全部飲むと便柔らかくなるので半分にしている

状態良好。
2週間追加処方し、徐々に減らしていただくことにした。

(感想)
『毎日仕事前に吐く』という特徴的な症状あるのにそれを主訴とせず受診されたところ,ついでに治った症例.そういった症状あってもあまり気にしないひとたちは,やっぱり市中にいるのだということを再認識.あと,嘔吐が抑肝散でひいていったのもそれまでの自分の経験ではなく,勉強になった

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