004 術後に物忘れが強くなった 70代男性
症例: 70代男性
主症状: 物忘れ
病歴: 2ヶ月前に胃癌EMRを施行(7日間入院)。退院後物忘れが出現したことに家族気づくが、本人に物忘れの自覚はない。認知症の進行を薬でとめたい娘につれられ精査のために総合外来を受診した。本人は診療に対して拒否的だった。
既往歴: 26年前より高血圧内服加療中、3年前に右腎癌で腎臓摘出(その後右鼠径部がしばしば痛む)、幼少時虫垂炎
症状:
・尿は、3年前から夜間2時間おきに起きてするようになった
・足がしびれる。特に手術した頃は左足がしびれていた。膝に力は以前から入りにくい
・以前から腰痛あり
・足が冷える
・耳は3年前から遠くなった
・趣味は野菜作りなど楽しめている
所見:
長谷川式 21/30点
舌 やや紫、舌苔少量、舌下瘀血(+)、口唇紫
判断:
術後・入院後の腎陽虚の悪化。
八味地黄丸を少なめに5g2X開始。
その後の経過:
1ヵ月後、娘は「少しは元気になりました」「物忘れはあまりよくなってはいませんが」
本人表情柔らか。難聴改善傾向。
2ヵ月後、再度娘とともに来院。表情明るい。認知症軽減。
3ヵ月後、妻のみとともに来院。笑顔あり。認知症明らかに消失。難聴強度。「足がいてえよ」「食欲ある」
腎陽虚改善傾向も不十分と判断。牛車腎気丸7.5g3Xに強めた。
4ヵ月後にフォロー予定。ついでにニューモバックスも投与を予定。
(感想)
入院後、術後の患者さんをみているといつも、腎陽虚の悪化を感じていた。補えばきっとよくなる、といつも感じていた。やっぱりその予想はよかったのだと手ごたえを感じた。
そのうち、せん妄患者さんに六味丸を使ってみたい…。よくなると思うのだけれど…。