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2008年07月31日

004 術後に物忘れが強くなった 70代男性

症例: 70代男性
主症状: 物忘れ

病歴: 2ヶ月前に胃癌EMRを施行(7日間入院)。退院後物忘れが出現したことに家族気づくが、本人に物忘れの自覚はない。認知症の進行を薬でとめたい娘につれられ精査のために総合外来を受診した。本人は診療に対して拒否的だった。

既往歴: 26年前より高血圧内服加療中、3年前に右腎癌で腎臓摘出(その後右鼠径部がしばしば痛む)、幼少時虫垂炎

症状:
・尿は、3年前から夜間2時間おきに起きてするようになった
・足がしびれる。特に手術した頃は左足がしびれていた。膝に力は以前から入りにくい
・以前から腰痛あり
・足が冷える
・耳は3年前から遠くなった
・趣味は野菜作りなど楽しめている

所見:
長谷川式 21/30点
舌 やや紫、舌苔少量、舌下瘀血(+)、口唇紫

判断:
術後・入院後の腎陽虚の悪化。
八味地黄丸を少なめに5g2X開始。

その後の経過:
1ヵ月後、娘は「少しは元気になりました」「物忘れはあまりよくなってはいませんが」
本人表情柔らか。難聴改善傾向。
2ヵ月後、再度娘とともに来院。表情明るい。認知症軽減。
3ヵ月後、妻のみとともに来院。笑顔あり。認知症明らかに消失。難聴強度。「足がいてえよ」「食欲ある」
腎陽虚改善傾向も不十分と判断。牛車腎気丸7.5g3Xに強めた。
4ヵ月後にフォロー予定。ついでにニューモバックスも投与を予定。

(感想)
入院後、術後の患者さんをみているといつも、腎陽虚の悪化を感じていた。補えばきっとよくなる、といつも感じていた。やっぱりその予想はよかったのだと手ごたえを感じた。

そのうち、せん妄患者さんに六味丸を使ってみたい…。よくなると思うのだけれど…。

003 耳が遠くなり始めた 60歳男性

症例: 60歳男性
症状: 耳が遠くなり始めた

病歴: 先にあげた慢性咳漱の女性の夫。もともと漢方薬には否定的だった。
50歳をこえた頃からTVの音が大きくなってきたことに家族が気づいていた。高血圧の内服治療も開始していた。冷え性などはないが、年齢とともに腎虚が進行してきていると見ていて感じられた。
冷えのない腎虚であるため六味丸を処方した。
はじめは内服していなかったが妻に著効したのを傍で見て、飲み始めた(1日1パック)。

飲み始めて2週間ほどたってから「何かよく分からないんだけれど調子がいいんだよね!」
妻も、TVの音が小さくなった、顔色がよくなった、とのこと。
3週間ほどたってから「最近髪の毛がぺしゃんこになってきて、俺も年だな…と整髪料をつけて整えていたんだけれど、髪の毛のボリュームが増えて、風呂上りそのまま空気で乾かすだけでも大丈夫なようになったんだよ!!!」とのこと。

(感想)
アンチエイジングの六味丸の効果を実感した症例

002 咳、橋本病 50代女性

症例: 50代女性
症状: 都会の空気を吸うと咳き込み苦しくなる

病歴:
橋本病あり、近医でフォローされていた。
東京在住だが都心に出ると咳き込み苦しくなり、喉のあたりがカーッと熱くなり、悩んでいた。鎮咳剤処方されるも効果少なかった。毎年肺炎も発症していた。

判断:
半夏厚朴湯証

その後の経過:
内服すると咳が消失した。都会に出ても発作が起きなくなった。

(感想)
西洋薬で対症療法を行っても効果が少ないときに、きちんと診断して漢方薬を処方すると非常に効果があると学ばせていただいた。

001 慢性鼻炎・冷え性 30歳男性

症例: 30歳男性
症状: 慢性鼻炎・冷え性

病歴:
幼少期より、「雨が降ると体調悪い」「水に濡れると力が出なくなる」「食後やたらと眠い」「つばが多い」という体調を感じていた。成人し、疲れたとき指、膝などの単関節炎をしばしば発症していた。国家試験勉強をするようになってから、水様の鼻汁がとまらなくなってしまった。夏にひどく冷や汗あるにも関わらず冷感強く、冷房にあたるとすぐ風邪を引く状態になってしまった。

判断:
人参湯証

その後の経過:
人参湯内服し三日目に鼻水消失! その後徐々に易疲労感が軽減し、冷感軽減し、関節炎の発症頻度低下し治癒速度も上がるなどの、体調改善を認めた。

(感想)
実は自分です。この効果の速度をきっかけに、漢方診療にはまりました。
花粉症とかに効ヒスタミン剤はありだと思うけれど、365日続く慢性鼻炎は、きっちり診察して漢方薬とかで整えた方がぜったいにいいと思う…