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2008年08月19日

012 眠くなる 70代男性

症例: 70代男性
主訴: 眠くなる

現病歴: 1ヶ月くらい前からいつも眠い。集中しにくくて疲れやすい。浅目が醒めると口の中が乾いている。立ち上がるときふらつくことがある。

他症状:
・9ヶ月前に脳MRIとるも異常所見なし
・風邪をひきやすい
・先天性股関節脱臼の左足が冷えて困る
・毎年沖縄に行くと体調よくなるのに、今年はよくならない

・夜中尿に起きることはない
・手は冷えない

既往歴:
先天性股関節脱臼、前立腺肥大(5年前から飲んでいるアビショットで残尿感なくなった)、胆石症(20年前胆嚢摘出術施行)、健康診断毎年受けているが異常なし
内服歴:
メリスロン、ノイロビタン、サイモチン、メイラックス、アビショット

解釈モデル 「疲れすぎているのではないか」

所見:
・腹 臍下に脱力著明、左下腹部に違和感
・筋肉質、脂肪少

処方と経過:
腹診と冷えと耳の所見から腎陽虚と判断。牛車腎気丸7.5g処方

(1ヵ月半後)
・今の薬とてもいい気がする。他の薬を全部やめたけれど、前立腺もめまいもよくなった気がする。耳鳴りもでなくなった
・股関節の古傷は痛い

→牛車腎気丸では古傷には対応できない。腎を補いつつオ血を整理する当帰芍薬散を試してみることとした。

(2ヵ月後)
・とてもよく効いたから今日で最後にしようと思っています。新しいのじゃなくて前の薬がよかった気がする
→念のため、追加で3ヶ月出して加療終了

(感想)
・冷えは西洋医学では捕らえることができないので無視されているが、その異常を持っている患者は非常に多い。それをtargetにすると状態を改善できる人が実はかなりいる。西洋には「肩こり」という概念がないせいで線維筋痛症が出現しやすい?のに似ている気がする。

漢方薬は、ある程度治療すると、西洋医学で治療不能な疾患が、数ヶ月できちんと治る!

011 慢性咳漱・左膝痛 50代男性

症例: 50代男性
主訴: 慢性咳漱・左膝痛

現病歴: 5年ほど前からずっと咳があった。15日くらい前から両みぞおちが常に痛むようになった。喉に何かひっかかるかんじもある。

他症状:
・他、両手PIP、右膝も痛い。朝のこわばりは10分。
・汗はよくでる、水は1500くらいのむ
・冷え性あり
・下痢気味
既往歴:
・10年ほど前に頭をぶつけ、1年間脳外科に通ったことある
・高血圧
生活歴:
・タバコ 1箱弱/日
所見:
・舌 オ血(-)、青色
・胸部・膝X線・心電図明らかな異常なし

処方と経過:
まず咳をなおすこととした。体力中等度での慢性咳漱として、五虎湯を処方。

(1ヵ月後)
・1日のんだら急に咳が少なくなり、その後も徐々に減っている。胸の痛みも取れた。
・舌 奥は青いが先端部は赤くなった

→希望もあり、五虎湯継続

(3ヵ月後)
・2週間前から風邪をひいてなおらない。咳がひどい
・心窩部圧痛(+)

→体力低下者の慢性に経過している風邪と判断し、麻黄附子細辛湯に変更

(4ヵ月後)
・前の薬にかえて1週間でよくなりました

→咳漱改善と判断、五虎湯停止。今後、関節痛を改善することとした。まず、脾虚と判断し人参湯処方。

(5ヵ月後)
・膝まだ痛い
・風邪ひいて、咳でる。治療する前に戻った。風邪をひくまで咳調子よかったけれど
・風邪は前からひきやすい
・DIPが痛い。朝10分間程度の硬直あり

→風邪に対して麻黄附子細辛湯を短期間。人参湯に加え、五虎湯再開。

(6ヵ月後)
・咳少なくなった
・膝の痛み感じなくなってきている
・指の痛み、前はPIPが痛かったのに、だんだん痛みが先のほうに移動してきた

→人参湯だけでもう一度みてみる

(感想)
・咳の最後の悪化は、メンゲンだったか? 症状が消失する最後に似た症状が悪化する経過は、興味深かった
・漢方薬の中止は、本人がやめたいというまで待つのが安全なのか?

2008年08月12日

010 口腔内のねばねば感 70代女性

症例: 70代女性
主訴: 口腔内のねばねば感 「上から口に落ちてくる気がする」

現病歴: 1年半前に風邪をひいた。咳、鼻水は治ったのだが口の中がねばねばするようになった。耳鼻科受診し副鼻腔炎の診断を受けて半年治療するも改善せず。主治医にGERD含め精査、薬物調整受けるもねばねば治らず。精査希望し当院受診。

他症状:
・やる気がでない
・だるい
・脚がつりやすい(7〜8回/月)
・ひどい冷え性、風邪をひきやすい
・半年前に1日間の原因不明の健忘あった
・涙はたくさん出て困る
・夜寝ているときに咳はでない
・楽しめている

既往歴:
・肺良性腫瘍
・右手本態性振戦
・高血圧、高脂血症、不整脈、慢性胃炎、卵巣嚢胞

生活歴: ADL自立

所見:
・表情活気あり
・口腔内粘性の唾液著明
・舌 胖、紫、舌下毛細血管散在
・脈 不整、やや沈
・手 やや熱感(+)
・腹 心窩部緊張(+)圧痛(+)、臍下冷感著明
・副鼻腔CTにて両側軽度副鼻腔炎(+)

処方と経過:
・前医: 副鼻腔炎治療も効果なし。シェーグレンらしくはない。GERD考えPPI処方も変化なし。薬剤性の可能性も考えたが(7種類内服)切れる薬なし。
・はじめは証を掴みきれず、脾虚も腎虚もあるか?GERDの可能性はあるとGERDに対してevidenceある六君子湯6g処方しまずは様子見。
・3週間後、便はいくらか硬くなったが他著変なしとのこと。ときどき足の感覚がおかしくなることもあるのでいっしょに治してほしいとのこと。体力低下し四肢冷感ある鼻疾患に対応するものとして苓甘姜味辛夏仁湯5g投与。
・1ヵ月半後、「治らない」「朝のうちはわりあいいいが」「鼻から出る感じが多くなってきた」 副鼻腔炎、神経症・心身症、頭部に水の滞りあり消化機能も低下している状態、と考え半夏白朮天麻湯7.5g処方。
・3ヵ月後、「ねばねばへってきた」「後の薬はいつもの先生のところで出してもらう」とのことで主治医に祭紹介、診療終了。

(感想)
・証がまったくつかめず、右往左往してしまった…
・振り返ってみると、活力のめぐりの悪さがあった。そこを解きつつ整理するのがよかったか

2008年08月11日

009 尿管結石・冷え・胃不快感 60代男性

症例: 60代男性
主訴: 尿管結石、冷え、胃不快感

現病歴: 10年前より両上肢の冷えあり当院受診も異常なしとの診断受けた。以前より胃不快感でしばしば受診し逆流性食道炎の治療を受けたことあった。今回、10日前から下腹部から陰部まで締め付けられるような痛みが出現、小便の回数も増え違和感も出現したため受診。

他症状:
・人より食べる方だが太らない(やせ体型)、時々嘔気あり
・食べた後に眠くなる
・尿 夜間1〜2回起きる。痛かった頃は2時間おきにおきていた
・便は2〜3回/日。食事をすると出る
・冷え性。夏でも寒さを感じる。すぐあかぎれできる。冷えると眠れないのが困る。腰はあまり冷えない
・天候に体調左右されない。しかし季節の変わり目は体調悪くなりやすい
・口渇感少ない
・息がくさいと妻に言われる

既往歴:
・虫垂炎
・蓄膿症(手術歴あり)
・人間ドックでは毎回尿潜血を指摘されていた

生活歴:
・仕事は事務と畑仕事

所見:
・尿所見は潜血(+)のみで沈渣含め異常なし
・口腔内にあぶくあり

処方と経過:
・尿路系の違和感あるも症状軽度。
・脾虚がBaseに強くある。尿路症状を伴う消化機能の低下なので、清心蓮子飲7.5g処方。
・1ヶ月後来院。「その後痛みない」「食べた後の眠気が消えた」「ふつう夏は食欲でないのに、あれを飲んでいるせいか食欲がへらない」
消化機能低下によく効いている。しばらく使用し、寒くなってからの冷えを確認してみることにする。

(感想)
初診のときに全体から違和感を感じ、もともとの体調不良をtargetに漢方薬を処方してみたところ、体質を改善できた印象。そのうちに消化器の整理のみに漢方薬を切り替える必要はあるかもしれない。

008 便秘 80代男性

症例: 80代男性
主訴: 便秘

現病歴: 膠原病疾患の診断のために入院。PMR? RA?
それ以外の症状として、以前より下剤を使用し5日に1回何とか便を出すという状態であるとのこと。

他症状:
・兎糞状のコロコロした便

処方と経過:
・高齢者の兎糞状の便秘、とのことなので麻子仁丸5g処方。その翌日から
「毎朝ちょうどいい便がでるようになった」とのこと。

(感想)
西洋的下剤ではコントロール不良であった便秘が、毎日快便となった症例。

ただ、下剤をずっと使い続けることは体を弱くするので避けたいところ。膠原病が整理できたら、消化器を整える建中湯類で整えたいところ…

007 めまい 60代男性

症例: 60代男性
主訴: めまい

現病歴:
青年期よりてんかん、約10年前より、時々体動時の回転性めまいあり。脳外科にてフォロー。しばしばめまいにて救急受診。今回も、頭位変換性めまいあり救急外来受診。

他症状:
・つばが多い
・嘔気(-)嘔吐(-)
・心身ともに疲労がたまっている

既往歴:
・幼少期の両側中耳炎→難聴
・てんかん(20代より)
生活歴: 
・母親の介護を一人でしている、単身
・アルコール 焼酎3杯/日、タバコ(+)

所見:
・体格はしっかりしている
・頭位変換時に眼振(+)
・舌 淡、黄薄苔、舌下静脈(++)、舌下毛細血管(++)
・脈 やや浮、両側中枢側が虚、右>左
・心窩部に圧痛硬結(+)、腹力充実
・夏なのにステテコをはいている
・難聴
・夜は2〜3回トイレに起きる

処方と経過:
仰向けになるときにもめまいあり、循環器・中枢の異常は考えにくい。BPPVとしては毎回経過が短すぎ不自然か。
腎虚・脾虚をbaseとした体調不良か。肝も弱い…。全身のバランスが乱れていて証を掴みにくい…。
脾虚あるめまいなので半夏白朮天麻湯処方。翌日にはめまい改善(普段もすぐにめまい改善するとのことだが…)。
後頚部の疼痛もあるとのことなので針灸紹介。今後針灸とも協力し、証を判断し治療していく予定。

(感想)
うちの病院はめまいの特効薬な苓桂朮甘湯がないのでめまいので、この半夏白朮天麻湯を出すしかなのでつかっているのだけれど、めまいをおこす元の体質を整理するのにいい感触がある。胃腸が弱そうな青白さ、目の下の隈、胃腸の弱さの自覚、などがあればよく効く印象あり。

…めまいを訴える患者さんはとても多くて、そして、効くわけない、と分かっているメリスロン処方とかメイロン点滴とかよくされる。実際効かない。
だいたい、蕁麻疹とか肝炎でグリチルリチンの静脈注射とかするけれど、あれは漢方薬の甘草だと理解している医者がどれだけいることか。気軽に使っている下剤はもともと漢方薬からきているとわかっているのか。そもそも普段自分たちが使っている西洋薬のevidenceがどれはどれだけあってどれはどれだけないのかを理解していない。検査データ、数字で患者をフォローしても、病歴とか身体所見で患者をフォローすることができない。薬理、生理、病理を意識しないで病名→治療と短絡思考している医者に限って、漢方薬をバカにする。東洋医学的生理学まで毎症例きっちり落とし込まないと漢方薬は使えないから、そういったレベルの医者たちは漢方をバカにしないと頭がぐしゃぐしゃになるのだろう。医学部低学年の生理学から学びなおしてきてほしいものだ。

006 慢性咳漱・月経痛 40代女性

症例: 40代フィリピン女性
主訴: 慢性咳漱、月経痛
初診: 5月

病歴: 1年前から咳が止まらない。近医(病院も呼吸器科なし)、耳鼻科(診療所)、精神科(診療所)と受診し、鎮咳剤、去痰薬、平滑筋弛緩薬、抗ヒスタミン薬、SSRI、抗生剤処方されるも効果なし。月経による貧血のため鉄剤も内服している。胸部X線等問題ないと言われているが、詳しく検査してほしいと夫に付き添われに当院受診。

既往歴:
・半年前に甲状腺腫大を指摘され、3ヶ月前に摘出術施行(毎年健診受けているも指摘されたのははじめて)
・花粉症
内服薬: アストマリ、ブルフェン、レスプレン、アドエア、パキシル、フェロミア、ゼスラン

他症状:
・痰が絡まってつらい
・咳き込みすぎて吐くこともある
・寒さ苦手、とても冷える
・雨の日が苦手、痰が増えて頭痛もでてくる
・排便は毎日ある、食欲は安定
・卵、鳥を食べると症状悪化する

生活:
・職業 製造工場職員(粉塵あり)

所見:
・血液 肝逸脱酵素軽度上昇、IgE 300(花粉症の時期)、甲状腺機能異常なし
・呼吸機能 特に異常なし
・体重 十年前から7kg増えて、BMI 30

・舌 細長、青、歯痕(++)、舌下静脈怒張(+)
・胸 異常音なし
・腹 左胸脇苦満(+)、臍上・左右下圧痛(+)

処方と経過:
・はじめは咳が強いことから神秘湯7.5g3Xを処方してみた。
・が、2週間後「喉が痒くてたまらなくなり痰もなかなか出なくて吐いた」「薬が合わないのかなとやめてみたらよくなった」とのこと。胆気うっ滞??と考え、半夏厚朴湯7.5g3Xに変更。

・1ヶ月後、「咳は出なくなりました」とのこと。「卵や鳥を食べるとまだ吐いちゃう」「気持ちの薬をやめたら咳がでてきた」
「子宮筋腫がつらくて。生理が半月は続く。出血がひどくて貧血になるから鉄剤を飲んでいる」「何かしてもらえたら…」と新たに訴えあり。腹部所見で胸脇苦満消失、臍左下の圧痛のみ残存。舌下静脈(++)。オ血と判断。子宮筋腫縮小効果のevidenceある桂枝茯苓丸7.5g処方、半夏厚朴湯5gに減量。

・2ヶ月半後、「このあいだは生理が3週間続いていたけれど、飲み始めた次の日から生理楽になった」「不安の薬はのまないようにした。でも咳は出ない」

・3ヶ月半後、「新しい薬になって、朝おきにくい…」「生理があるとき、おなかの左下が2日間くらい痛い」 体力が落ちていて、血払う桂枝茯苓丸では強すぎる、補う効果もある当帰芍薬散7.5gに変更。

・4ヶ月後、「卵、鶏肉食べてもアレルギーあまりでなくなった」「生理の痛み我慢できるようになった」「前頭部が思くておすと気持ちいい、左後頭部が痛い」「もう他の病院の薬は鉄剤しかのんでいない」「朝目覚まし時計使わなくても起きれるくらい元気になった」
左上半身にゆがみがたまっていたので、TE3(左手5指近くの甲)、BL6(左頭頂、ここのみ置鍼)、TE16・GB21(首・肩)、PC3(肘内側)、LI4(1・2指の間)に取穴  (注: WHOの表記方法に従って記載。日本人にはあまり知られていないが、アメリカなどでは針はよく研究されている)
「気持ちいい」とのこと。頭痛軽減した様子。薬が多い可能性があるが、次回までは今の半夏厚朴湯・当帰芍薬散を継続することとした。

・4ヶ月半
「調子いい」
「咳、たまにでるけど前みたいに喉痒くない。出るときは鼻も痒くて鼻水でちゃう」
「生理。いつもなるまえ、両脇がぱんぱんになる。今そんなかんじ」
「2週前からぐっすり眠れない感じ」
「いつも左手ぱんぱんだったけれど、鍼をやってからそれなくなった」

脈 やや沈、虚、細
舌 歯痕(++)、オ血(-)、淡白色
腹 臍左上部〜臍左横 圧痛あり、腹力(+++)

薬続行

・6ヶ月目
「2週くらい前からまた喉がかゆくなってきちゃった」
「生理、前は2週間はつづいたけれど、今は1週間で終わる。前は塊があったのが、今はサラサラでたくさん出る。はじめは赤、最後は黒。生理のあとは自分でも貧血って気がする。目も手も白い」「前は生理前左下が痛かったのが、右下が痛くなるようになった」
「子宮筋腫、病院で検査したら、前は丸かったのが、今は長く大きくなったっていわれた」

脈 やや虚
腹 臍下部に圧痛(+)
舌 やや淡色、歯痕(++)、オ血(-)

半夏厚朴湯を2包→3包に再度増量

・7ヶ月目
「薬もどしたら、喉良くなった。痰でないし痒くない」
「生理、いつも胸がパンパンになるからなる前に分かるんだけれど、それが分からなくなってきた」
「1週間くらい頭がすごく痛い」「1ヶ月前から辛くなってきた。冷たくなっている感じ。ボーっとする」「頭を前に傾けると鼻に水が入る感じ」
「右肩が辛い」

頭の皮膚が全体にむくみ著明。頭頂やや後方のみへこみあり。圧痛あり。

左心包系〜頭頂まで鍼施行
状態改善

薬続行
副作用はしばらく鍼で調整していく


(感想)
・まだまだ漢方になれていなかったころに右往左往してしまった症例。いまだったらもっとまっすぐゴールにつけるけれど…。
・「喉の違和感」「甲状腺機能異常」に半夏厚朴湯、を実感。喉の異常にいいのなら、橋本病とかにはどうなのか? 年齢や性別を考えると、効きそうな人が多そう
・漢方薬でおさまってきたせきも、SSRIをやめると咳が出る、というのは、こころとからだが繋がっているということで、興味深かった
・神秘湯は症状悪化させることもあるとの報告あるが、本症例もそうだった。気をつける必要あり

2008年08月01日

005 動悸・生理痛 40代女性

症例: 40代女性
主訴: 動悸

病歴: 8年ほど前から階段をのぼったときや仕事をしているときなどに動悸のようなものを感じるときがあった。血縁に心臓病の人間もいて心配になった。発作時、息苦しさなし。不整脈なし。頭痛なし。脈が速くなる感覚もなし。「豚が駆け上るような感じ」
また、左頚部から側頭部にかけて疼痛、リンパ節腫脹あり。初診日に皮膚科も受診した

既往歴:
・アトピー 15歳までステロイドを大量に使用していた
・片頭痛
・流産(3経妊2経産)
・毎年健康診断を受けているが異常を指摘されたことはない

他症状:
・30後半の流産から足の浮腫強くなった
・両足の親趾の内側1cmくらい感覚がない
・更年期障害はないと婦人科で診断された
・以前鍼灸を受けたとき、次の日まで吐き気がひどかった
・白髪家系ではないのに40歳で白髪になった
・冷えひどい。夏も長袖を着ている。冷えるときは、腰→足→背→全身と広がっていく。
・時々耳鳴りがある
・ご飯をたべると眠くなる
・生理痛強い。暗色の塊でる。頭も痛い

所見:
・やや水がたまった体型
・左頚部にリンパ節腫脹
・脈 弱、触れるときびりっとした感覚あり
・心窩部圧痛あり、左鼠径部圧痛あり
・両母指球筋やや腫脹、冷感(+)、紫色
・足趾すべて圧痛あり、両第一趾内側は感覚なく凹み気味

判断:
・流産をきっかけに、浮腫・白髪など悪化していることから腎陽虚が起点となっている可能性が高い
・しかしそもそもに脾虚があるか?
・腎を補おう
・しかしそもそも邪がつまっている。漢方薬より鍼灸の方がいい適応か

→牛車腎気丸7.5g3X処方、鍼灸紹介

その後の経過:
(10日後)
「すごく楽になりました!!」「鍼をうったらすっと楽になったんです」
「この薬を飲むと30〜40分くらいだるくなるんです…」

・脈 右<左 も全体的に強くなった
・舌 やや紫、唇の紫色については消失
・腹部の圧痛変わらず
・リンパ節腫脹ほぼ消失

→やはり牛車腎気丸の地黄の、消化器・脾臓への副作用強いか…。当帰芍薬散に変更。漢方より鍼灸がよく効いている感じ。
鍼灸を見学に行く。消化器系の経絡を使っている。
鍼灸のあとは尿がよく出て体が楽になるとのこと。しかし、尿がよく出る期間も数日しか続かず、また体調が悪くなるとのこと。

1ヵ月後の受診。
・相変わらず頭痛あるが薬使わなくても我慢できる程度。アトピーが全身に出ることがなくなった。よく眠れる
・汗がでるようになった。以前は夏でもカイロが手放せなかったのに。部下から「7年一緒に仕事をしていてはじめて汗を見ました!」と驚かれた
・鍼やお灸をすると次の日だるい
・足はまだむくむ
・でも、これだけ体調が楽になることは今までなかった
・薬を飲み忘れると尿がへる

(所見)
・右胸脇苦満と右下腹部圧痛、と腹診大きく変化
・T-Chol 247あったのに、2週間で216に減少

→当帰芍薬散よくきいている。しかし、水毒をより早くさばいたら楽になるか?
 五苓散を追加

2ヵ月半後
「高校生の頃から生理痛がひどかった。黒い塊がでた。何をやってもだめだったのが、嘘みたいに楽になった!! 塊もさらさらになった!!」「生理のときの頭痛はまだあるけれど、前みたいに吐き気がでることなくなった」
「花粉症がひどくて…。春と秋、あるんです。何年かに一度、とてもひどくなる」
「薬を飲むと尿が出ちゃうから会議の前に飲めない」
腹部正中と下腹部の圧痛残存

→五苓散効果ないみたい。当帰芍薬散のみにもどした

(感想)
・40才で生理痛と分かれられるのも…。もっと早く使える医者と出会っていたらと感じた
・やっぱり漢方エキス剤のみでは微妙な調整が難しい…。鍼灸と組めるとらく
・鍼灸はよくも悪くも即効性があるので評価に使いやすい
・急速なコレステロールの変化が理解しきれない。中年女性の高脂血症はもしかすると違う方面からコントロールすると早い可能性あるか??